第183話 完全武装の女神様!

 ボロとダズンを仲間にしたその日の夜——。




「ヒロキ」


 来た。


 俺が目を開くと、そこは例の不思議な空間だった。いつものようにふわりと宙にただよい、目の前には——。


 大人のフォリアがいた。完全武装の戦乙女だ。いや、戦神かな。


 以前の鞣革なめしがわの胸当てが、銀の鎧に変わっている。背中のには大きな弓と矢筒を背負い、それもまた鈍く輝いていた。(しかしガードが固くなってしまった……もうあの『ゆさゆさ』は見れないのか?)


「ヒロキ、助かったぞ。おかげで今の私は力がみなぎっておる。銀聖水を作るのも造作もない」


 そういえば笑顔に力がある。

 自信がある感じだ。


「俺も驚いたよ。フォリアがあんな戦い方が出来るなんて、知らなかったよ」


 すると女神様は腕を組んで首をかしげた。


「うむ、あの様な戦い方は私も初めてだな。記憶にある限りでは雷撃は初めてじゃな」


 ええー⁈


「今まではこのように大きな戦いはなかったのじゃ。せいぜい、辺境での小競り合いを騎士団が処理していたくらいでな。私は火や水、銀の武器に力を与えるくらいしかしておらぬ」


「そ、そうか……でも似合ってたぞ。力強い女神様だったな」


「うむ、雷撃にも魔をはらう力があるようであったな。あの大男の中のグロスデンゲイルも消滅したのだろう?」


 俺はうなずいた。

 ボロの方は追い出された霧をカリンが銀の御守りで消滅させたが、ダズンの方は体内の霧ごと焼いたのだと思えた。


「次があるんだろう?」


「ああ、また来るな。しかし今度はのがさぬ」


 今なら村人の戦意も信仰心も強い。

 準備をするなら今のうちだ。



 今のうちに戦う為の道具を用意しておくのに限る。(そういや銀聖水の長期保存は可能なんだろうか?)


「銀聖水と、それから村長に頼んでおいた矢が集まっているからそれにも力を宿してほしい」


「ほう、それは興味深い。誰が弓矢を使うのか?」


「うーん、弓の名手はいないからなぁ。威嚇用かな」


 フォリアはあからさまにがっかりしたようだ。


「つまらん。いっそあの娘に宿って、私が射ても良いかのう」


 待て待て待て。

 黒い霧に取り憑かれた者を傷付けるのはちょっと……。


「むう、では腕くらいなら射ても……」


「ダメだって!」


 それはきっと最終手段。


 フォリアは大人のお姉さんの姿でその可愛らしい唇を尖らせた。


 いや、ねたってダメだよ。




 つづく

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