第181話 とりあえずここに住めばいいじゃない!
「俺達はヒロキの旦那が生き返ったことに驚いて、町を逃げ出したんだ…」
口下手なダズンの分も話そうと、ボロは頑張って話し出した。
町から逃げ出したものの、別の町でも彼ら3人組の話は伝わっていて、再びそこから逃げたという。
あたりの村々はもちろんよそ者を受け入れるわけもなく、彼らは行き場を探して北へ向かった。
「何のあてもなかったんでさァ。でも、今思えばカシラの言う通りに歩いてたかな」
黒い霧に呼ばれていたんだろうか……?
それから岩ばかりの荒れた山に迷い込み、あたりはだんだん暗くなり、ついには自分達がどこにいるのかも定かでなくなっていったという。
「薄暗いし風は吹くし、生きた心地がしなくなって……後はもう、途切れ途切れにしか覚えてねぇな」
「そうか、だいたいわかって来たぞ。きっとその山はいつも黒い雲がかかっているあの山だな」
俺は頭をめぐらし
あそこに狼やカシラがいるんだろう。
「あの……俺達はどうすれば?」
「うん、カシラを助けたいだろ?何とかカシラから黒い霧を追い出そうと思うんだけど……」
同じ手が通じるかどうか、そこが心配だ。奴もみすみす引っかかるようなことはしないだろう。
何かいいアイディアはないだろうか?
そこへカリンがお茶といつもの菓子パンを出してくれる。
一瞬、2人が身を引く。
緊張しているのか。
ボロとダズンは菓子パンを恐る恐る手に取ると、ガツガツと食べ始めた。「うまいうまい!」と止まらない。
うーん、まずは2人の
「カリン、この丘にこの2人をとりあえず住まわせてもいいかな?」
カリンは笑顔で、
「ええ、良いですよ」
とあっさり言ってくれた。
……カリンは誰にでも優しいからな。
かなり残念な気がするが、せめてもの抵抗に、カリンの小屋とは反対側に住まわせることにする。
俺の部屋の外側にシーツで作った簡易的なターフを取り付けて、増やした布団で寝てもらう。
野宿ばかりしていたボロとダズンは、こんな寝床でも結構喜んでくれた。
寝床の準備をしていると、丘の下をユリウスが愛馬・ヴァイスベルに乗って通りかかった。
「ユリウス!」
丘を駆け下りると、彼はヴァイスベルから降りた。
「今から町へ行くのか?もうすぐ日暮だぞ」
「駆けていけば日が落ちる前に着く。それより……」
彼はボロとダズンがしている事を見て
「あれは何している?」
「ああ、あいつらをここに泊めようと思っ……」
「何ィィィ⁈」
つづく
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