第175話 女神様の力になろう!


「頑張れ」


俺の言葉に反応するように、彼女の周りの淡い光が強くなる。


そこへユリウスもやって来た。片膝をついて敬礼する。


「女神・フォリアよ。私も微力ながらお力添えを」


そしてまた光が強くなる。


ボロも両手をついて平伏へいふくする。


「め、め、女神様だ!」


戸惑とまうフォリアが、俺を見る。


俺はうなずき返す。

俺達は遠くに湧き立つ声を耳にしていた。


2人でそちらへ目をやる。


リール村だ。

リール村の皆んなが、土壁の上から身を乗り出して、声を上げている。


「女神様——!!」

「フォリア様だ!」

「どうぞ魔を退しりぞけてください…」


その声が届く度にフォリアの輝きが増す。


彼女はふわりと浮き上がる。


その輝きは魔を払う力を持っているのか、グロスデンゲイルが後ずさっていく。


ね、悪しき者よ!』


フォリアはまばゆい光を放ち、力強く言った。


閃光が奴らに降りかかる。


『くっ!』


大風が吹いて耳元でがなり立てる。その中でかすかに『覚えていろ——』と聞こえたが、おそらく奴の負け惜しみであったのだろう。



目を開けたときにはまばゆい光は止やみ、奴らは姿を消していた。


「あーあ、ひどいありさまだな」


野焼きのために集めていた麦藁むぎわらが風で散ってしまっていた。


白金のフォリアの髪にも麦藁のクズが付いている。


『おぬしもな』


言われて頭に手をやると藁クズが落ちた。それを見てフォリアが笑う。


「おーい」


村から人々が喜びながら駆けてくる。


それを見た彼女はまた微笑んだが、急に顔を引き締めると、


『ヒロキ、奴はまた来るぞ』


「ああ、負け惜しみが聞こえた」


『次こそは逃さぬ。絶対にな』


それだけ言うと、ぐらりと倒れかかる。俺は慌てて受け止めた。


俺の腕の中には、気を失ったカリンがいた——。




つづく

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