第176話 しばし喜びの中に!


その日はそれから大騒ぎだった。


なんせ遠目とはいえ、皆が輝く女神様を見たのだから、村中が興奮で包まれるのも仕方ない。


皆が丘に詰めかけて、カリンを褒め称える。しかし当の本人はぼんやりとしか覚えてなくて、気恥ずかしそうにしていた。


それを差し置いて、村人達で持ち寄った食べ物を配って、半分お祭りみたいになっている。


「カリン、お疲れ様」


「あっ、ヒロキ!私……よく覚えていないのですが、フォリア様が私に降りたと聞きました」


「そういえば、いつもはカリンが寝ているときだったなあ」


「突然、強い力が私の中に入って来たことは覚えています。そのあとはもやの中から風景が見える感じで……」


聞いてみれば自分では何もできないみたいで、ただ目の前のことを眺めている状態であるらしかった。


「あ、あれは?電撃を手から放つ時、どんな感じ?」


あれは俺もやってみたい。

フォリアは俺に取り憑いてくれないだろうか。


「えっと……私は身体を動かす感覚がなくて。よくわかりませんでした」


んー残念。


「カリン姉ちゃん!」


カールだ。


「すごいな、オレ見たよ!姉ちゃんが宙に浮いているの!」


興奮して頬まで紅く染めている従兄弟いとこの顔を見て、カリンは苦笑いした。


自分がしたことではない事を褒め称えられるのは苦手なんだろう。


そこへユリウスがエレミアを伴ってやって来た。と、いうよりはエレミアが勝手にひっついて来たのだろう。


「カリン殿」


ユリウスはにこやかな笑みを浮かべると、優雅にひざまづいてカリンの手を取った。そのままその小さな手の甲に唇を寄せた。


「あっ!ユリウス!」

「ちょっとぉ!」


俺とエレミアが同時に抗議の声を上げる。カリンは頬を紅潮させて固まっている。


それを無視してユリウスは続けた。


「カリン殿、今日ほど感銘を受けた事はありません。私はこれから深緑騎士団グリューネ・ヴァルトの支部に行き、この丘と貴女あなたをフォリア様の奇蹟として報告して参ります」


おお、遂に騎士団の助力が得られるのか!?




つづく

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