第173話 女神様の雷撃!
「カリン⁈」
丘に放たれた光は、驚いた事にカリンから放たれていた。
いや、あれはカリンじゃない……。
フォリアだ!!
見る間に姿形が変わっていく。
スラリとした姿態に胸当てをつけ、その下には白を基調とした戦少女のドレス。白金の長い髪をなびかせて羽根兜をかぶったその姿は白金のフォリアだった。
そのまま中空に浮かび、ゆっくりとその瞳をあける。
その瞳は高貴な紫の色。
珊瑚色の唇から鮮烈な言葉が放たれる。
『その者に触れる事は許さぬ』
そう言うとフォリアは右手を大男に向けた。雷撃とも見える青白い光が走り大男に当たる。
『ぐあ…!』
衝撃で俺達は後ろへ弾かれた。
「わぁ!」
転がる先にユリウスがいた。
彼も驚愕の表情で中空に浮かぶフォリアを見ている。
「…女神よ!」
雷撃を喰らった大男・ダズンが前のめりに倒れて来る。地響きを立てて大地に受け止められる。身体のあちこちから薄く白煙が上がっていた。
そこへフォリアはふわりと舞い降りる。
『ヒロキ、銀聖水を持て』
後ろも見ずに彼女は言う。
いや、結界の外のグロスデンゲイルから目を離さないようにしているのだろう。
俺はユリウスに
2人で水桶の取手を持つと、フォリアの側に駆けつけた。
「どうすればいい?」
フォリアは俺の問いには答えず、無言で右手を広げた。
水桶に残っていたわずかな銀聖水が球になって彼女の手のひらの上に浮かぶ。半円を描くように幾つかの球は煌めきながらアーチを作る。アーチの反対側は左手の手のひらだった。
そのまま、グロスデンゲイルを見やる。冷たい視線だ。
『去れ、人に害なすものよ』
不意にリーダーが——グロスデンゲイルが笑い声をあげた。
『クヒャヒャヒャ…!やはりか!』
風が、生暖かい風が強くなった。奴を中心に吹いているのか。風は奴の髪を逆巻きにしながら、黒い霧を漂わせる。
ひとしきり笑い終わると、グロスデンゲイルはその暗く光る瞳をフォリアに向けた。
『覚えている…覚えているぞ!』
ゴツゴツした人差し指を彼女に向けながら、怒りとも嫌悪ともつかぬ声を出す。
『その気配、その力!はるか昔に我を消滅させた女だな?』
恨みだ。
憎しみの声だ。
奴はフォリアを憎んでいる。
つづく
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