第172話 悪意のハンマー!
ユリウスの愛馬ヴァイスベルは大男・ダズンからの悪意を受け取ったのか、急に落ち着きを無くし激しく首を振る。
そのせいで力が抜けたのか、余計にダズンに手繰り寄せられてしまう。
「お
カリンがヴァイスベルのロープにしがみつき力一杯引っ張る。
が、カリンの力ではそのまま引きずられて行く。
「ヴァイスベルッ!」
ユリウスが抑えていたダズンの右腕から左腕のロープに移動して加勢する。しかしダズンは一巻き一巻きロープを
「ユリウス、
このままユリウスやカリンも捕まっては大変だ。俺なら最悪復活出来る。(カリンに怒られるとしても、だ)
ユリウスは短剣を抜いてヴァイスベルとダズンを繋ぐ紐を切った。その勢いでカリンとヴァイスベルが向こうへゴロリと転がって行く。
ダズンの方も急に軽くなった腕を持て余しよろける。
すかさず俺は毛皮を引っ張った。
チャンスだ!!
そう思えたのは、一瞬だった。
俺は力一杯引っ張ってのだが、黒く膨れ上がった大男は微動だにせず、よだれを垂らしながら、俺を見て「にやぁ」と笑った。
ユリウスの叫びが遠くで聞こえた気がした。
「下がれ、ヒロキ!」
——!
大男は右腕にボロをぶら下げたまま、俺を横殴りにした。
「…!」
痛え——!
地面に転がる俺を真上から見下ろすと、空いている左手を振り上げる。
まるでハンマーだ。
悪意の鉄槌が、俺をめがけて振り下ろされた——。
また死ぬかもな。
俺がそんな事を考えた時、
キィン!
そんな硬質な音がした。
同時に眩しい光が辺りに広がる。
『ぐぅぉおおう…!』
大男が暴れてボロが投げ飛ばされ、「イテッ」と言う声が聞こえる。見れば大男は
いや、彼だけではない。
狼達は地にひれ伏し、グロスデンゲイルそのものと思われるリーダーも片手で目を覆っていた。
なんなんだ、この光は?
俺は振り返りながら光源を見定めようと、手で影を作りながら目を細めた。
その光の中心には——。
「カリン⁈」
つづく
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