第149話 誰かがわかってくれますか?
父と母として——。
「いわゆる親心ってやつか。それがなんだっていうんだ?ドルフは勝手に村を出て行ったんだぞ。なんでみんなの金を渡す必要があるんだ」
まくし立てる俺に困ったような視線を向けて、カリンは言葉を選びながら答える。
「だから、親心なんです。子を思う気持ち、心配する気持ち、それが出てしまったんでしょう」
「だけどッ、1つの家庭ならともかく、村長は100人近くの人を守らなくちゃならないはずだろ?その為のものをわざわざくれてやらなくても…」
「ヒロキ、なにも村長はお金を全部あげたわけじゃないでしょう?大丈夫ですよ」
「なにが親心だ…」
止まらない。
1番嫌な自分だ。
泣きそうになる。
「ヒロキ、前に私に言いましたね」
「?」
「お父上とうまく行っていない、と」
ああ、そのことか。
俺は
「お母様とも?」
「まあね」
俺はカリンの顔が見られなかった。
多分困った顔をしているに違いない。
「ヒロキは…ご自分のお父様とお母様を信用されていないのですね」
俺はいきなり立ち上がった。
その勢いに驚いたカリンが小さく悲鳴をあげた。
「そうだよ!それが何か?」
カリンやカールみたいに父親と信頼しあえてる人たちにはわからないだろう。ドルフでさえ親が心配して手をかける。
親って——。
親は—。
——俺は親に愛されていない。
だから、親に愛されている人が
「ごめん、カリン」
「……」
「俺は——」
それから俺は自分のことを話し出した。
つまらない話だ。
父親は仕事ばっかりだった。結局いわゆるワンオペ育児ってやつで、母親1人に育てられた。
仕事ばっかりって言ってもバリバリ仕事してるタイプじゃない。
仕事を言い訳にして、家でなにもしない奴だ。
休日?
昼寝して、飯の時間に起きてまた昼寝。
連れて行ってももらえない。
小さい時は俺も分からなかった。
そういうものだと思っていたからだ。
俺が小学校に行き始めて、俺の父親とは違う『父』の話を聞いて、おかしいと感じ始めたんだ。
大きくなるにつれて、その父親になにも言えない母親にも嫌悪感が
疲れた、疲れたばっかり言って、でも父親にはなにも言えず、俺に「ごめんね」ばかりを繰り返すようになっていた。
習い事させてあげられなくてごめんね。
母は財布も父親に握られていたからお金を使うのも自由にならなかった。
俺が中学に入ってパートに出る。
自分で使えるお金で俺を
そのうち金を出せばそれで愛情を注いだと思うようになってきた。
俺も
「——そしたらある日突然、ここへ来たんだ」
それが俺のそれまでの話。
少し自分に酔った様にカリンの方を振り返る。
と、眼前に俺の頭めがけて
ええーっ⁈
つづく
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