第148話 裏切られたのは俺の心ですか?
村長が村を出て行くドルフ達にお金を渡していた事を聞いて、俺は正直なところ
……心が狭いだろうか?
(せまいな)
村長夫妻にちょっとキレてしまった自分に自己嫌悪。
けど心の整理がつかなくて、不機嫌なまま丘へ帰る。
腹立たしさが熱を持ち、そのせいで自然と早足になる。
「ヒロキ、怒らないでください」
半ば駆け足でカリンが追いかけて来た。さすがに俺も足を止める。
「…ヒロキ、ごめんなさい」
その言葉に俺は虚を突かれて、身を引いた。
「なんで?なんでカリンが謝るんだ」
「ヒロキが怒っているからです」
「俺が怒っているのは——」
俺が怒っているのは、村長たちに対して?それとも人のことを許せない心の狭い俺に?
「——村長の考えにだよ」
カリンの前で「俺に怒ってる」とかカッコつけようとしたのに、口から出たのは本音だった。
「だからカリンが謝ることはない」
カリンは弱々しく首を振る。
「それでも、私は村の人々とヒロキの架け橋であるつもりです。だから、彼らの代わりに私が謝罪します」
「そんなの、変だよ」
反対に俺が何かしでかしたら、カリンは俺の代わりに謝って、皆にとりなしてくれるんだろうか。
カリンが謝ってばかりになるじゃないか。
「いいえ、そうではありません。私は
「俺と村を?」
「ええ、ヒロキと他の人を」
向こうの世界にいたままの俺なら、人と
人に合わせるのが苦手だとか、勝手に過大に期待して裏切られた気持ちになったりするとか、俺本位の考えで心が乱されるのが嫌だったからだ。
そうだ、だから俺は勝手に怒っているのだ。
村長が俺の予定通りにお金を使わなかったから。
俺の期待を裏切って村を出て行くドルフにそれを渡したから。
そして、デルトガさんがドルフに持つ感情を俺が理解できないから。
「俺は、デルトガさんの気持ちがわからない」
そうつぶやいてゆっくりと歩き出す。
カリンは黙ってついて来た。
俺の部屋——。
カリンの小屋——。
俺たちが住む丘はふもとから見上げると、小山のようになっている。
立ち止まって見上げる俺に、カリンは座るよう促した。俺は素直に枯れ草の上に座る。
疲れてたからだ。
カリンも俺のとなりに腰掛ける。
「…ヒロキ」
「なに?」
「ヒロキはデルトガ村長のお気持ちがわからないと言いましたね?」
無言で頷く。
「村長は——村長と奥様は、父と母として、ドルフさんを心配なさったのです」
つづく
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