第130話 悪夢!

荷を運びながら村に近づいて行くと、ぞわり、と悪寒おかんが走った。


リール村の方角の空模様がおかしい。


今まで青空だったのがどんよりとした灰色の雲がわだかまっている。


それは村に近づくにつれ濃さを増し、黒雲に変わっていく。


まるで雨が降る直前の空のように、あたりを薄暗くしている。


「変だよ、ヒロキ」


「ああ」


俺は背負っていたリュックを肩から外し、カールに手渡す。


「カリン!」


俺の声にカリンもリュックをコリンに預けた。


2人で走り出す。


「あ、ちょっと待て…」


ユリウスの制止を無視して俺達は村を目指す。


聖なる丘までやって来ると、俺達の動きに合わせるかのように黒雲は退しりぞいて行く。それでも村の上は曇天が覆っていた。


俺とカリンは顔を見合わせるとうなずき合い、村の入り口へと急いだ。


「あっ、ヒロキ様!カリン!」


門番はカリンのお父さんだった。手には俺が渡した加圧式水鉄砲が握られている。と、言うことは……。


「まさか、また狼が?」


彼の表情が冴えない。

いや、少し青ざめている。


「お父様?」


カリンも不安げな声を上げる。


「ああ…すまない。大丈夫だ」


「何があったんですか?」


カリンのお父さんは後ろ——守っていた村の方を見る。つられて見てみれば、土壁の上や門の影から村の人々が幾人か顔をのぞかせていた。


皆一様に顔色が悪い。


彼はゴクリと唾を飲み込むと意を決したように俺達に向かってうなずいた。


「狼と共に…人が…来ました」


「人?」


「その、なんと説明して良いか…黒い…いや、黒衣の人…?」


カリンのお父さんは切れ切れに現れた人の様子を俺達に伝えようとする。


「その、ただ黒い服を着ていると言うよりは周りに暗さがあるといいますか……表情も眼の周りに黒いくまがあり、生気のない白い顔であるのに黒く見える…。何とも不気味な風体でした」


「…狼を率いていた黒狼のような?」


「ああ!そうです。大柄な男達でしたが、その様な雰囲気を漂わせておりました!」


男達?


「はい、3人の柄の悪そうな男達でした」


3人組?

まさか。


「まさかと思うけど、1人は頰に傷があって、1人は頭に布を巻いてて、もう1人は毛皮の上着で凶暴そうな?」


するとカリンのお父さんは驚いて、


「なぜそれを!」


と叫んだ。

こっちも何でだ⁈って叫びたい。


何でだ⁈



つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る