第131話 我が名は…!

カリンのお父さんの話を聞いて、俺とカリンはゾッとした。カリンなど自分の腕で自らを抱きしめていた。


黒い霧が人を寄生体に選んだのだ。


そしてよりによって俺に悪意ある男達に入り込んだ——。


「何か…何か言っていませんでしたか?」


これは一つの疑問である。

今までは狼に乗り移っていたから言葉は発しなかったが、人に宿った場合はどうなるのか?


もしかして何か黒い霧の意思などが知れるかもしれない。


「……名乗りました」


「えっ?」


彼ははうめく様に声を出す。


「名前を名乗ったのです」


「名前…」


奴にも名前があったのか。


「グロスデンゲイル、それが男が名乗った名前です」


まてよ、それは誰の名だ?


宿られた人間の方か?

それとも黒い霧の名前か?


「あれの名前だと思いました。3人が揃って名乗っておりましたから…」


グロスデンゲイル——。


だが何故名乗ったんだろう?

何か意味があるのだろうか。


「それから?」


「いえ、ヒロキ様がやって来たので…黒雲と共に姿をくらませました」


「そっか。皆無事でよかった」


「はい。コレが無かったらどうしていたか分かりません」


そう言ってカリンのお父さんは大ぶりな水鉄砲をかかげた。


「とにかく銀聖水は苦手な様です。近づいて来ませんでした」


「そうですか…。ホント良かった」


せめてものことだが、銀聖水が効く様ならまだ救いがある。追い払えるのだから、なんとかなりそうだけど…。




俺は奴らが喋ったって事が気になった。


意思がある。

名前がある。


では今までは?


意思があったが他者へ伝えられないだけだったのか?


黒い霧の考えって何だ?




つづく

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