第95話 今日は屋台で!

 証拠を出さねば騎士団本部に連行すると言われて、俺達はしぶしぶユリウスを村へ案内する羽目になってしまった。


「いいけど、昼メシと買い物してからだぞ」


「よかろう。とっとと済ませろ。私はこの方達と食事して待っている」


 そう言ってカリンとエレミアを連れて行こうとする。


「待て、コラ!」


 油断も隙もないヤツだ。

 むしろお前が席を外せ。


「ヒロキ、あそこに屋台があるよ!あそこで軽く済ませよう」


 カールが上手く割って入る。

 まぁ、時間もないし悪くないか。


 側にあった屋台は俺の世界でいうところの「ホットドッグ」屋だった。ケチャップはないが、焼きたて熱々のソーセージをパンに挟んで売っている。


「6個ください」


 ホントは5個と言いたいとこだが、カリンの手前カッコつけてみた。


「待て、私は貴様におごられるいわれはない」


「おじさん、5個で良いや」


「待て!女性の分は私が出す」


 面倒くさいなコイツ。

 あ、エレミアが喜んでる。

 ちぇっ。


 ところがカリンが、


「私達も騎士様にお金を出して頂く理由がありません。それぞれ購入いたしましょう」


 と、にこやかに断ってくれた。


 拒否されたユリウスは驚いている。たぶん断られた事がないんだろう。


「理由ならあります!貴女は美しい!まるで女神・フォリアの様に!」


 ユリウスはやや必死の趣きでカリンを口説こうとするが、一方のカリンは引いている。


 しかもこのセリフはフォリアが聞いたら怒りそうだ。


 俺はカリンに迫るユリウスのマントをぐいっと引っ張った。


「はい、そこまで。断ってるだろ」


「ぐぅっ、こんな事は初めてだ」


 しぶしぶ引き下がった騎士と共にホットドッグもどきを買って皆で食べる。

 ベンチなども無いので立ち食いだ。


 けど、美味い!


 シンプルにおいしいぞ。

 香草が入っていないソーセージは俺のいた世界のものに近く、塩味がきいている。パンもハードブレッドではなく柔らかいものをトーストしているので、外はカリッと中はモチっとの日本人好みの食感だ!


 隣の屋台で飲み物も買う。

 レモン水と麦酒エールがあったので、皆で好きな物を選ぶ。


「あっ、騎士様は麦酒エール飲むの?」


 カールが仲間を見つけてはしゃぐ。


「ふつうに飲むだろう、子どもじゃあるまいし」


 と、横目で俺を見る。


 くっそー!

 あれは不味いんだよ!



 つづく

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