第91話 初めての商談!

「カール、商談はまとまったぞ」


 オットー・モレーン・コンスタンティンを見送った後みんなの所に戻ると、すでに菓子パンは売り切れていて、子ども服も順調にはけていた。


 カールに取引の内容を伝えておく。


「現金も良かったんじゃないの?」


「うん、それでも良いんだけど、コンスタンティン商会を通すと卸値おろしねで買えるんだ」


 だいぶ安くしておくと言われたのをとりあえず信じてみる。


 こちらは元手なしなのだから損はない。


「すっかり任せちゃったな」


「ヒロキは別の商談をまとめたから良いんだよ。あの人かなりの有名人らしいね」


「そうなんだ」


 カールがお客さんから聞いた所によると、この国——正確には地域だが、この一帯で様々な商品を扱っているらしい。


 思ったよりも大商人である。


 気になる物、つまり商品になりそうなものは直に確かめて売買にこぎつける。


 今回の菓子パンがそうだ。


 俺はパンと認識しているが、彼は『菓子』と呼んでいた。


 コンスタンティン商会が扱う『高価な菓子』。売れそうだなぁ。


 貴族とか神官の人とか買うのか?



 次は月末の大市だからたくさん買うぞ——。



 オットーさんはそう言っていた。

 何か目新しい物を持ってきても良いかもしれない。



「ヒロキ、そろそろお昼にしませんか?」


 カリンに声をかけられてハッとする。

 もうそんな時間か。


「ごめんごめん。売り上げはどう?」


「上々です。私達もだいぶ慣れてきましたよ」


 にこ、と微笑ほほえまれる。


「あ、うん。…良かったよ」


 そこへエレミアが口を挟む。


「なによ、もっと褒めてくれてもいいじゃない?」


 口調はキツイが表情はニヤニヤしている。かなりの売り上げなんだろう。


 なんか俺だけ働いてないみたいじゃないか。まだまだ力が有り余ってるぞ。


「じゃあ私達お昼食べてくるから、ヒロキが店番してて」


「うおぅ、それは嫌だ」


 俺の一言にみんなが笑う。


「持って来たものはほとんど売れましたよ。やはり新しいものが売れますね」


 カリンはそう言って続けた。


「だからみんなでお昼を食べに行きましょう?」




 つづく

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