第92話 思わぬ再会!

 今回は『銀龍亭』に行く前に売り上げをまとめる。前回はそれで目を付けられたから、今日は気をつけて先にするのだ。


「今日の売り上げは銅貨に換算して405枚分と小銅貨7枚!前回を超えたよ!」


「やったー!」


 皆で万歳ばんざいする。


「今日は何を買おうか?」


「前回は買わずに帰ったから、今日はゆっくり考えたいわね」


 エレミアは何か買いたいようだ。


「では、お昼ご飯を食べながら考えようか?」


「賛成!!」




『銀龍亭』の前に着くと、中から数人の男達がどやどやと出て来た。


「あっ!!」


 お互い顔を見て声を上げる。


「……」


「…………」


 空気が固まる。


 薄汚いバンダナ。

 肩からかけた毛皮。

 顔に大きな傷。

 の、3人組。


 向こうもぽかんと口を開けて、俺の顔を見ている。


 なんていうか、こんなにすぐに会うとわかってたら逃げ出す準備でもしてればよかった。背中を向けて駆け出そうかと迷う。


 が、意外にも驚愕きょうがくの度合いは向こうの方が上だった。


「んななな、なんで生きてんだ…?」

「ししし死んだはずじゃ…?」

「ばばば化け物ンだ!」


 ゴロツキどものクセに腰抜けだ。(お化けに弱いタイプだろう)


 少しずつ後ずさりしながら俺の事を伺っている。


 これは…チャーンス!


 俺はわざと大きく一歩踏み出す。

 ザッ、と土埃が舞う。


「わ、わっ」


 それだけで3人はこけつまろびつ走り出した。毛皮のヤツなんか地面に手をつきながら逃げていく。


「ヒロキすごい!」


 カールに褒められたが、何もしていない。強いて言えば殺した相手が平然と歩いてたから驚いたんだろう。


 まあ、気分は良いけど。


「あ!」


 逃げるやつらを目で追っていたエレミアが小さく声を上げた。


 つられてそちらを見る。


 逃げて行く3人が何か——誰かにぶつかる。ぶつかられた方はガタイの良さも手伝ってか、微動だにしない。


 むしろ3人組の方が跳ね飛ばされた。

 ドドドッと転がる。


「…ってえ!、何突っ立ってやがる!!」


 顔面からぶつかった毛皮の男が鼻を抑えながら、理不尽な怒りをぶつける。


 相手はすらりと背が高く、よく通る声で、


「ほう、これはこれは。前の自由市で少年らから金を巻き上げようとした上に、その少年を刺殺した一味ではないか」


 と言い放った。


「へ?」


 地べたに転がった男達が相手を見上げると、にこやかに笑みを浮かべた青年が立っていた。


 濃い緑色のマントが翻る。


 その下には銀色に輝く甲冑が見えた。腰には長い剣を下げている。


 騎士だ。


 そしてこの人は…。



 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る