第77話 俺の嫌いな…!

 カリンの発言はフォリアが聞いたら怒りで卒倒しそうだ。


「ち、違うって!俺は普通の家に生まれて普通に育ったごく普通の高校生だって!」


「?」


「あー、つまり俺の母親は人で、今は元気だ」


 多分。

 カリンはジュースの入ったコップを両手で持ったまま、


「ふふっ、良いことですね」


「そうか?」


「そうですよ。お父様は?」


「なんだよ、急に?」


 俺は焦る。

 父親なんてもっと嫌いだ。

 俺が真面目に話をしている時にちゃかしやがった。クズだ。




『なんで真面目に話してんのに笑うんだよ!』

『お、怒った怒った(笑)』

『ふざけんなよ!』

『ふざけんなよ〜』

『うるさい!お前なんか出て行けよ!』

『なんだと、お前こそ出て行け!』

『ああ、出て行ってやる』

 俺はスマホも持たずに家を出た。スマホ持たないってのは連絡手段も無いし、居場所もわからないって事になる。だから母親は慌てて俺を追いかけて来た。

 俺は全力で走って逃げた。

 もちろん母親はついてこれない。

 俺は1人夕闇に包まれる街を走った——。




「ヒロキ、ごめんなさい」


 カリンの声にハッとなる。


「なんで?」


「今まで私達にお話なさらなかったという事は、それなりの事情があるのでしょうに…私ったら…この飲み物の所為でしょうか?」


 いや、アルコール入ってないから!

 そんな酔った所為せいみたいな事言うなー。


 ホントは俺の表情に何か感じたんだろう。父親嫌いが顔に出てしまったか。


「…俺、父親と上手くいってなくてさ」


 カリンが急に話し始めた俺に驚いたのか、目を見開いている。


「だから、カリンがお父さんと無事を確認して抱き合っている時とか、カールが親父さんと買い出しに行く時とか、心の中では『いいなぁ』って思ってたんだ」


「それは…」


「違うよ!俺の父親とそういう事をしたいとかじゃなくて、なんていうかそこに『家族』があるような感じがさ、いいなって」


「…そうでしたか。何故ヒロキが私達を支えてくださるのか、少し分かりました」


 何?


「ヒロキは私達と家族の様な絆を作りたいのではないでしょうか?」



 つづく

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