第78話 君の前では素直でありたい!
カリンの言葉は俺に刺さった。
俺は皆んなを大切にしたいと思っていた。その根源が自分の親との確執なんて、思いたくなかった。
でも、俺がこちらに来て気をつけているのが実は対人関係なのかもしれないというのは当たっている。
「ヒロキはとても優しく私達を気遣って下さいますね」
それはあっちの世界で他人に興味が無くて、結果ぼっちになったからだ。でも頭ん中ではいろいろ考えてたんだ。
俺だったらこうする、とか。
こんな風に声をかけようか、とか。
教科書貸そうか、消しゴム落ちたよ、あれはこう作ればいいのに……。
声に出して言うのがめんどくさいって思っているうちに、本当に声が出なくなっていた。
だけどずっと頭の中で考えてたから、こっちに来てからはそれが溢れるように口から出て行く。
それは。
それは。
それは君が話を聞いてくれたから。
「優しいのはカリンだよ」
宵闇の中、焚き火が始まった。
オレンジ色の光が俺達の顔を照らしだす。子ども達が周りからいっせいに走り出していなくなる。キャンプファイヤーに向かっていったのだ。
ああ、なんかもじもじする。
カリンも何か言いたそうだけど、2人で黙ったままだ。
でも不快ではない。
それが信頼で繋がった2人の沈黙だから。
つづく
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