第73話 傷の手当てをします!
俺とカリンが気がついた事。
それは、黒い霧が普通の生物に宿っていたという事。いや、正確には変質させたであろうという事だ。
魔を宿した肉体は、死して銀聖水で清められ元の肉に戻った。
さっき見たのはそういう事なのだろう。時間を置いてまた別の黒狼が来るのではないかという疑念が湧き上がる。
「カリン、残念だけどまた黒狼はやって来ると思う」
「ヒロキ……」
「でも、俺達でも倒せる事が分かったんだ。村のみんながもう少し手を貸してくれたらもっと楽に倒せると思う」
俺は
つられてかカリンも微笑む。
「そうですよ!また倒せます、きっと!」
そうだよな。
きっと出来る。
「ヒロキ、袖が破れていますよ」
カリンが俺の右腕を指して言う。
「ああ」
振り回した黒狼の爪が制服を裂いたのだ。腕にも軽い裂傷が出来てた。
「大丈夫。部屋に行ってくる」
俺は丘を駆け上がると、ドアを開けて中に入る。今はシーツがカーテンのようにドアの内側にかけてある。
これが無いとドアを開けた瞬間にぼうっと突っ立っている自分と対面しなくてはならない。(気持ち悪いんだぜ)
中に入ると傷も袖も元に戻る。
ついでにタオルと水のペットボトルを持って外に出た。
「カリン、君も汚れを落とさないと」
そう言ってタオルを渡して、そのタオルに水を含ませる。
カリンは礼を言いつつ、顔や首筋を拭いた。服のあちこちにも血が付いている。
「あっ!カリンも怪我してるじゃないか」
カリンの左肩あたりの布地が破れて血が
「ふふっ、これくらい大丈夫です」
「ダメだって!ばい菌が入ったら大変だぞ」
俺は慌てて濡れたタオルでカリンの肩を拭こうとした。
こちらでも傷口から入る病気はあるだろう。それこそ狂犬病とか、破傷風とか…。
「じっ、自分で出来ますから」
逆にカリンにタオルを奪われる。
そそくさと彼女は自分の小屋に戻って行った。
俺はその後ろ姿を見ながら、
(新しい服をどうにかしてあげたいなぁ…)
と、思っていた。
つづく
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