第66話 黒狼が来る!

 俺の嫌な予感は、数日後に的中する事となる。


 麦穂むぎほ刈りに皆が出ていた時、ついに形ある悪意——黒い狼となってやって来たのだった。



 黒い雲に追われるようにして、村人達は慌てて門から村の中へと入り門扉を閉ざす。


「カリン!君も丘へ逃げろ」


「いいえ、お手伝い致します」


 カリンの瞳には強い決意の光がある。俺もうなずいた。


 今日は狼と戦う準備をしているのだ。

 いや、正確には追い返すための準備だ。


 出来るかどうかは分からない。


 でも戦わなければあいつらは何度もやって来るだろう。


 狙うは一匹。


 先頭を駆けてくる真っ黒な狼——。



 10匹余りの狼の群れはそいつを先頭に矢尻のような形でこちらに向かってくる。


 まずは黒狼を他の奴らと引き離す。


 一匹だけ孤立させる。


 それには……。



「カール!今だ!」


 俺の掛け声と共に村の外壁の上にカール達が顔を出す。


 あの水撒き部隊だ。


 最高に圧力をかけた水鉄砲を持たせてある。カールが号令をかける。


「行くよ、みんな!」


 それに合わせて一斉に魔除けの水——銀聖水を発射した。




 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る