第65話 家畜が増えました!

 俺が頼んだのは、そう、ニワトリだった。銅貨数枚で手に入り、毎日タマゴが手に入る。エサ代もそんなにかからない。なんなら村の中に放しておいても勝手に地面の落穂などを食べるだろう。


「わぁ、すごい!」


 子どもたちも喜んでいる。


 他の村人達も集まってくる。


「おお!ニワトリだ!」

「いち、にい……11羽もいるわ!」

「中に入れましょうよ」


 良かった。

 喜ばれている。


「カール、最初はタマゴを半分くらい採って、後は増やすんだぞ」


「わかってますって!任せてください」


 初めはタマゴも少ないけど、ヒヨコが増えればニワトリ自体も増えるし、いずれ肉も食べられるだろう。(ああっ唐揚げ食べたい!)


 麦の刈り入れは小休止だ。


 他にも袋入りの麦や豆を買って来たから、それも荷車ごと村へ入れる。


 ワイワイと賑わう村人の後をついて行く。


「ヒロキ様もどうぞ、お昼ご飯を用意します」


 そう案内されたが、


「外にいるよ」


 とだけ答える。声をかけてくれたご婦人は軽く会釈すると、理解したと頷いてくれる。


 俺のそばにカリンがいたからだ。


 カリンは神に捧げられた供物として、村に入る事は出来ない。


 俺は彼女1人を置いて村に入るのは出来るだけ避けている。

(やっぱり1人残ったら寂しいよな)


「皆喜んでいましたね」


「うん」


 皆が門の中へと入ると、一気にあたりが静かになる。


 秋の風が通り過ぎていった。


 ふと東北の方の空に目をやると、遠くに黒雲が見えた。


「前より近づいて来ていないか?」


「…ええ。近づいています」


 嫌な予感がする。





 つづく

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