第63話 お手伝い、お手伝い!

 麦穂刈りが始まる。


 秋の空は良く晴れていて、まだ暖かな陽射しが出ている。作業を始めたら汗ばむくらいだ。


 さて麦畑だが、田んぼとは違ってひと束ずつまとまっているわけではない。みっしりと生えているのを一掴みにして、鎌で刈っていく。


 どこが誰の畑か、なんていう決まりはなく、全部が村の畑であるようだ。


「そういえば、税金…とか年貢とかってあるのか?」


 カリンに聞いてみた。


「『ぜいきん』というのはわかりませんが、年貢はあります。その土地を治める方に麦を持っていきます」


「ここの領主って?」


 カリンは笑いながら、


「この辺りは村が独立しているので領主様はおりません。いるのはもっと都市の方ですね」


 ここは田舎なので、と彼女は笑った。


 それぞれの村は独立していて、自給自足が基本。村を守るのも自分達。


 町は村の発展形で流通が多くなる。


 都市は行政の長を置くが、その頂点は女神信仰の神官であるという。


 いわば自治体が並列していて国を形成していない世界なのだろう。それでいて通貨があるのだから、宗教でまとまった国とみなせるのかな。(歴史の教科書でも読めば何かわかるかも知れん。読む気ないけど)


 まぁ重い年貢が無いのはいい事だ。


 刈り入れは鎌を持った一団がどんどん刈っていき、後ろについた者達が藁で結んで束を作る。それをあちこちに山にして置いておく。


 一つの畑の半分くらい刈り終わると交代するが、また別の者達が長い木の棒を持って来て木組みを作る。


 低い物干し台みたいな物を作ると、山になっていた麦穂の束をかけていく。

 麦穂がきれいに並んで干され、壁のようになって見える。


 こうして秋の陽を浴び、麦は乾燥していくのだ。


 …で、結局俺が手伝ったのは最後の穂をかけるところ。


 鎌は使えないし、麦束を作るのも下手だったので子供たちに混ざってやっていた。

(稲刈りなんてやった事ない。小学校の授業で作った米はバケツで作ったせいか、学年全部の稲がスズメに襲われて全滅した)


 穂掛けをしながら麦穂に触ると、枯れているからかホロホロと落ちて行く。


 これはひどいな。


 本当に藁を干しているだけのようだ。


 麦穂を掛けるだけなので手が空いたら子どもたち(といっても5人だけ)と遊ぶ。


 何をして遊ぶかというとサッカーだ。




 つづく

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