第62話 村の手伝いをします!

 翌日までに資金の足しになるように、軽くて売れ行きの良いシーツを20束ほど用意した。


 そして夜が明け…。


 カール親子に頼むのはある買い物だ。


「なるほど、それらを買うのは賛成ですね」


 ケンプルさんも同意してくれる。


「カール頼んだよ」


「任せといて!」


 2人は馬に引かせた荷車に乗って出発する。それを見送ってから俺とカリンは村へ向かう。




 今日は村人総出でやる事がある。


 空の穂をつけた麦畑の刈り取りをするのだ。


「少しは実が採れるんだろう?」


「ほんの少しでしょうね」


 それでも無いよりはマシだ。


 それに麦藁自体がいろいろ使えるという。乾かして冬の間の燃料になるし、灰にして肥料になるし、飼い葉の一部にもなる。何より村人のベッドや布団にもなるんだそうだ。


「布団になるの?」


「はい。布団の袋の中に乾燥した藁を入れるんです。ヒロキの布団とはぜんぜん違いますよ」


 と、いう事は俺の布団を増やせばその分の藁を肥料にしたり飼い葉にしたりできるわけだ。


 新品でなくて悪いけど。


「それは良いですね!あのお布団は柔らかくて軽くて暖かいですもの」


 カリンも賛成してくれる。


 この際だ、ポリエステル製の毛布も出しても構わないかな。あまりにもこの世界にそぐわない物は出したくなかったけど、これくらいならいいんじゃないだろうか。


『変わった布』扱いされるくらいだろう。




 村の入り口では大勢の村人たちが刈り入れの準備をしていた。子供たちも手伝うようだ。


 俺達を見つけた村長が近づいて来た。

 昨日の町での事件をカール達から聞いたと言う。


「ご無事でなによりでございます」


「まぁ、これが取り柄のようですから」


 ついでに布団の事を伝えておく。


「後で見本に一つ持っていきます」


「いやいや、誰かに取りに行かせましょうぞ」


 村長も藁が沢山あるに越した事はないようだ。何より久しぶりに村に馬が来た事が嬉しいらしい。


「皆、世話をしたがっておりましてな」


 冬の間に馬に食べさせる干し草も作ろうと盛り上がっているらしい。


 いい傾向だ。




 つづく

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