第56話 再会!
フォリアが消えたと言うよりも、どうやら俺の意識が回復したらしい。
気がつくと見慣れた天井。
俺はまた自分の部屋の真ん中で倒れていた。
起き上がるのに力が要る。
体を動かすとどこが痛いとかそういう所は無いが、刺された所や殴られた所がだるい。
起き上がるととても気分が悪かった。
「うぇ…。吐きそう」
前に生き返った時よりも身体に残る感覚が生々しい。そういえば以前は復活する時に女神・フォリアに会わなかったからそれも作用しているのかもしれない。
ドアを開けると夕暮れの世界だった。
茜さす空に枯れ草色の麦畑。
見慣れた風景に少し安堵する。
「…最悪のテレポートだな」
丘の上から眺めていると、遠くに幾人かの人影と馬が荷車を引いているのが見えた。
町からの方角だ。
「もしかして」
もしかしなくてもカリン達だ。
俺は丘を駆け下りた。
「おーい!」
俺に気がついたカリンが走り出す。
俺が刺された時泣きそうな顔をしていたのが思い出される。
泣いていないだろうか。
俺が生き返るのはわかっているから、それは無いかな。
近づいて来るカリンの目元は少し赤くなっている。
やっぱり泣かせてしまったか。
駆けてきた勢いのまま、彼女は俺の胸に飛び込んで来た。
受け止める俺の胸に、息がつまるような衝撃が走る。
「ぐはっ⁈」
俺はその衝撃を受けて後ろに尻もちをついた。
「⁇」
一瞬何が起きたかわからなかったが、カリンの
「ヒロキ」
はいっ。
「なんて…無茶な事をするのです?」
カリンの震える声に俺は様々な感情を感じ取った。
無茶な事をした俺への怒り。
命を失った俺への悲しみ。
そして生き返った俺への喜び。
「ごめん…」
つづく
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