第45話 天使が現れた!
「キャベツの酢漬け、ですか?」
焼いたベーコンにオマケをつけて売る、という俺の突然の思いつきにカリンは目を丸くする。
とりあえず2人で市場の中を歩いてそれを売っている店を探す。
「俺は食べた事がないから、どれが美味しいのかわからなくてさ」
美味しさがわからないばかりか、どんなものかも想像できない。漬け物みたいなものかと思っているが…。
「ヒロキ、ありましたよ」
カリンが指差す方にはいくつかの大樽を並べた店があった。暑さ対策か、はたまたホコリが入らないようにか、大きな日傘のようなものを広げている。
「味見してもいいですか?」
声をかけると気さくなおじさんがOKしてくれる。
「味見しないとうちの酢漬けの良さはわからないよ!」
ほうほう。
つまり店によって味がだいぶ違うのだな。
おじさんはトングで何やらヒョイとつまむと俺とカリンの手のひらにそれをのせた。
う……。
む、紫?
俺の手のひらには、千切りにされたキャベツとおぼしき物がひとつまみのせられている。
酢漬けというだけあってクタッとなっているが、色が、色が、色が紫色である。
「どうしました?ヒロキ」
見ればカリンはすでにもぐもぐと食べているではないか!
「いや、なんでもない」
俺は平静を装って、彼女と同じく口にする。
ぐぉ…っ。
す、すっぱ…。
いや、マズイ…。
「ん〜。少し酸味が強いでしょうか」
平然ともぐもぐするカリンに俺は恐れを抱く。
「ヒロキ?」
「……」
なんとか飲み込んで見たが想像を超える味であった。
「お、俺はちょっと苦手かな…」
「ああ、ではこちらの酢漬けはどうですか?」
カリンは
店のおじさんもその仲間だ!
ニコニコしながら別の酢漬けを俺の手のひらにのせてくる。
「……」
恐る恐るのせられたモノを見ると、
「あれ?」
色が違う。
今度は素材が明らかにキャベツとわかる、やや黄みを帯びたクタッとした千切りだ。
恐る恐る口にすると、意外といける。
もぐもぐ…。
これは、アレだな。
すっぱいドレッシングに漬けすぎたキャベツの千切り。
少し乳酸発酵している。
「どうですか、ヒロキ?」
「うん、これならいける」
カリンが一瞬でも
つづく
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