第46話 冷蔵庫はありません!

「あれは紫キャベツの酢漬けなんですよ」


 なるほど。


 俺達は酢漬け屋さんから小分けの器ごと購入して元の売り場に戻ることにした。


 紫キャベツか…。

 普段食べないもんな。

 俺が見かけるのは、せいぜいファミレスのサラダに少し混ざっているくらいか。


 あんなにクセがあるとは。


「村でも漬けたりしていたんですが、今年は何もなくて…。漬ける人によって、味がすごく違うんですよ」


 普通なら必ず食卓に添えられる一品のようだ。


「キャベツを買って帰るか?」


 俺がそう言うと、カリンは吹き出した。


「ヒロキ、キャベツの収穫はとっくに終わってますよ」


 あー。

 そうか。

 うっかりしてた。


「もう酢漬けになっているのしか手に入らないでしょう」


 そうだよな。

 冷蔵庫ないもんな。


「じゃあ、村にも少し酢漬けを買って行こうか」


「ありがとうございます」


 カリン笑いながら答えた。



 売り場に戻ると、カラーなどの手作り品が良く売れていた。


「ちょっとぉ!こんなに忙しいなんて聞いてないわよ!」


 エレミアがご立腹だ。


「変わってよヒロキ!」


「私が交代しますよ」


 カリンがさりげなく割って入る。

 ありがたい。



 一方のベーコン屋の方は俺が提案した通り焼きはじめていた。


「おう、お前さんの言う通りやっているぞ」


「親父さん、これも付け合わせでお客さんに食べさせてみて」


「いいのか?」


「その代わり今日俺達が買う分にオマケつけて下さい」


 親父さんはガハハと笑うと、キャベツの酢漬けを受け取ってくれた。




 つづく

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