第11話 彼女は野宿するつもりです!
ゴミの入ったダンボール箱を抱えながら、カリンと丘に帰る道すがら、この村の周辺の事について話した。
まだ魔物(狼や黒い霧が)現れてない村や町は売り物や交換できるものがあれば取引できそうだという。
場所はそう遠くないらしく、商売に行けそうだ。
次は商品だ。
俺たちが売れるものはまずは俺の持ち物を増殖させたものになるだろう。
「あのパンは売れるかな?」
「もちろんです!あの様な品は町に、いえ都市に行かなければ手に入らないものだと思います」
カリンもアレは気に入ってくれた様だ。美味しいもんな。
ただ毎日食べるもんじゃないから、アレと小麦や普通のパンと交換してはどうだろう?
その他に俺の部屋で増やしてもこの時代に合うものは何だろう?
時代にそぐわなくても良いなら機械類はどうだ?ゲーム機、スマホ…あまり良くないよな。最終手段にとっておこう。
再び部屋を眺めながら考えるか。
部屋の前まで来て気がついた。
カリンはどこで寝るんだ?
村には入れない、俺の部屋にも入れない。この丘の上で野宿するんだろうか?
「そうですね。そこまでは考えていませんでした。神様が現れたら、私の命は無いものと思っておりました」
そ、そうか。
そこまでの覚悟で…。
取り敢えず天気は良さそうだ。
気候も悪くない。俺の寝具を増やして外で寝ても風邪などはひかなさそうだ。でも1人で寝させるのはなぁ。
狼が出たらどうする?
俺は部屋に逃げ込めば良いけど、カリンはそうはいかない。
俺は、夜間はカリンが村に行く事を提案した。
カリンは首を振って、
「その事なら大丈夫だと思います」
「なんで?」
「はい、ヒロキ。この丘は神の丘。聖なる力で守られているはずです」
そうなのか。
それなら良いけど…。
そのあと俺たちはパンを増やすのに良い方法を思いついた。
思いついたと言っても少し効率が上がったというくらいだが。
ドアと同じく窓から出したアイテムも増える事が分かったのだ。
(俺が窓の外でパンを手放すと、元あった場所にパンが出現する)
そこで俺たちは、外にダンボールを持ったカリンが待ち受けて、俺が窓から手を出してパンを出す。カリンが受け取って箱に入れる。俺が1人で机のところとドアのところまでを行き来するよりもずっと早くパンを増やす事に成功した。
余力でポテチの袋も増やす。これは1人一袋でなくて良いから、ダンボールに入るくらい増やす。軽いのでダンボール箱を重ねても持っていけるだろう。
用意ができた頃には、外はだいぶ日が落ちかけてきていた。
夕方が迫ってきている。
「この丘は安全だと思いますが、村とここをつなぐ道行が心配です。陽が落ちるまでには戻りましょう」
カリンが助言してくれる。
俺は頷いてカリンを連れて出発する。
少し足早になるのは、やはり怖いからだ。最初に死んだ時は何もわからず意識が途絶えたから良かったが、腕が食われたまま逃げるとか恐ろしすぎる。
今さらそんなことが怖くなるのは、俺自身に何の力も、スキルも特殊能力も無いことがわかったからだ。
特別なのはあの部屋なんだ。
つづく
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