第4話 部屋には秘密があります!
俺は再び自分の部屋の真ん中で目覚めた。
右側にベッド、左側に本棚、奥に窓と机。マンガとかコンビニで買ってきた菓子などが散らかっている。
脱ぎ散らした服もそのままだ。
いつもの自分の部屋。
あれは夢であったのか。
そうだよなぁ。
でもなんか目覚めが悪いんだよなぁ。
どのくらい寝ていたんだ?
体を起こすと、窓の外の風景が目に入った。
「あれっ?」
思わず声が出る。
外にはあの丘の風景が見える。
俺は慌てて外へ出ようとドアを開けた。
そこには、カリンがボロボロになった俺の制服とバッシュを持って立っていた。
いきなりドアが開いたので、ひどく驚いたようだ。目をまんまるにして口を大きく開けてびっくりしている。
「ヒロキ……⁈」
俺の制服がカリンの手から落ちる。
彼女は駆け寄ってきた。
俺も靴下のまま飛び出した。再びあの不思議な弾力のある境目を通る。
カリンが部屋を出た俺にすがりつくようにして、
「生きていた……」
と
生きていた?
「どういう事?」
カリンは俺が村の前で狼に襲われて死んだのだと言う。亡骸はほぼ食い尽くされ、残った制服の残骸と靴を持ってきたそうだ。
その時ふと気がついた。
俺、いま制服着てる。
「どうなってんだ?」
うろたえる俺にカリンは、
「実は……」
と話しはじめた。
カリンが言うには、前回俺が部屋を出た時、俺の後ろに『俺』が立っていたと言うのだ。この時ものすごく驚いたらしいのだが、丘に住まう神の
「もしかしたらヒロキはまだ
そういえばこの部屋を出る時、妙な感覚を覚える。ぶるんとした何かを通り抜けるあの感じ……。
俺は振り向いた。
「うぇっ?」
部屋の中にはもうひとりの俺が立っていた。
部屋に出る直前の俺。
身動きせずに動きを止めている。
「気持ち悪ッ」
「ヒロキは私達の目の前で狼に食べられました。私はこの服と靴を拾い集めながら、ヒロキはまだ生きていると感じていました。でもやはり生きているのを見た時、とても嬉しかった……」
「そ、そう?」
カリンは俺のボロボロの制服と靴を拾い上げて渡してくれる。
これ、どうしよう?
とりあえず部屋に入れとくか。
「ちょっと待ってて」
俺がそれを持って部屋に戻る。
目の前にもう1人の動かない自分がいて不気味だ。
だが、俺が部屋に入った途端にもう1人の俺は消えた。
「えっ?」
戸惑っていると、手にしていたボロ服も靴も黒い霧のように姿を変え、消えてしまった。
何がわかりかけた気がしたが、はっきりしない。
とりあえず外に出ようとバスケットシューズを探すと、やはりまた元の場所にあった。
あの見えない壁を通り抜けて外に出る。
「カリン、これを持っていてくれ」
カリンにバッシュを持たせると、部屋の中に戻る。またもう1人の自分が見えたが、俺が部屋に戻るとそれは再び消えた。
本棚の上をみると、バスケットシューズはそこにあった。
部屋の入り口越しにカリンの持っているシューズも見える。
「つまり……」
つまりこの部屋から物を持ち出すと、それは増えて外の世界へ出る。
無限増殖?
つづく
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