第5話 増えます、増えます!

 単純な無限増殖じゃないよな。


 外に出してものは増えてる。

 けど、部屋に戻すと霧のように消える。


 食べ物は?


 俺は机の上に放ってあったコンビニの袋をひっくり返した。

 食べ物が増えるんなら結構いい。


 出てきたのはポテトチップス。

(うす塩‼︎やった!)


 オレンジ味の炭酸ジュースと水のペットボトル。

(もしかして水は正解か?)


 菓子パン。

(中にカスタードクリームが入った揚げパンに粉砂糖とナッツがかかっている。普通のパンが良かったか?)


 そして、最新刊の単行本。

(ああ、落ち着いたら読もう!)


 俺は無くなっても補充が効く水を持ち出すことにした。


 カリンの目の前でペットボトルのキャップを開ける。

 見たことの無い材質のビン(に見えるらしい)に彼女は驚いている。


 初めは地面にまいてもいいかと思ったが、やはりもったいない。


 じっと見つめてくるカリンの視線に、俺は彼女の分も持ってくることを思いつく。同じ物を同時に持ち出せるか、実証できるじゃないか。


 水のペットボトルをカリンに持たせるともう一度部屋に戻る。元の場所にやはりペットボトルはあった。


 それを手に取ると外に出る。


 カリンの手には……まだペットボトルはある。感覚的には二本に増えた感じだ。


 制服は破れても復元されているから、これを飲んでも部屋の中のペットボトルは変わりないはずだ。


 2人で飲むことにする。


 カリンは恐る恐る口をつけたが、キレイな水に感動したらしく、あっという間に半分ほど飲み干した。


 もちろん俺も同じだ。


 そしてペットボトルはそのまま置いて、検証の為部屋に戻る。


 よし、思った通りだ。ペットボトルはキャップも中身も新品のままだ。


 ついでにそれも持って出る。


 よし、三本になった。


 今度は飲み終わった空のペットボトルを持って部屋に戻る。

 やはりそれも霧散した。


 けど、水を飲んだ感覚…喉が潤っているとか胃に水が入った感覚はそのままだ。


 つまりこの部屋から持ち出した物は増える。部屋に戻さなければそのまま。

 体内に入れると入れた物はそのまま。


 かな?


 そして俺も外に出ると増える。

 部屋に戻ると1人に戻る。

 外で死ぬと部屋の俺が目覚める。


 たぶん。


 あと確認しておきたい事が一つ


 俺のスマホは使えるのか?




 つづく

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