第2話 私の村を救って下さい!
部屋を出る時、少し抵抗があった。何かぶるんとしたもの……でっかいゼリーとかの中を通るような抵抗があったが、普通に外に出れた。
金髪の少女は目を丸くしている。
とても驚いているようだ。
俺は後ろ手にドアを閉めると、改めて周りを見回した。
空は晴れていて青い空に霞むような白い雲が流れていく。野原と見えた場所は少し小高い丘になっていて、その頂上に俺の部屋がある。
そういえばと俺は振り向いて、自分の部屋を確認する。
明らかに俺の部屋だ。
壁は家の中のもので、本当に俺の部屋だけ持ってきたみたいになっている。
他の部屋との境目は同じ壁紙でキレイに包まれていて、ぶつ切りされたようにはなっていない。見えないけど天井の裏も同じ壁紙に違いない。
鍵がないのが少々不安であるがこれは仕方ない。もともと付いてないんだから。
「あの……」
もじもじした遠慮がちな少女の声に我に返る。
そうだった。
村に来て欲しいと言われていたんだった。
「俺、ヒロキ。君は?」
やはりまずは自己紹介しとかねば。
「ヒロキ、私の名はカーテローゼ。カリンとお呼びください」
カリンはうやうやしくお辞儀する。
見た感じ着ているものは古ぼけた青い洋服だ。上着に長めのスカート。それに白いエプロンを付けている。
靴は……何だろう?動物の皮だろうか?
雰囲気的には中世のように思える。
「こちらへ」
カリンは俺の行く先を示す。
丘のふもとから麦畑のような農地が広がっている。その向こうに集落が見えた。
あれが彼女の言う『私の村』なのだろう。
道すがらこの世界のことを聞いてみる。村の名はリール村。文明の程度はやはり中世ヨーロッパのようだ。大きな都市には騎士団などがあり、彼女の知る武器は剣や槍が主である。
そして現在、リール村は危機に瀕していると言う。
「何があった?」
「それが……」
飢饉。これは大変だ。
狼。ふむふむ。
霧。え?霧?
「霧といっても普通の霧ではありません。何か魔物が霧になってやってくるような、そんな悪しき霧なのです」
ほうほう。だいぶらしくなってきた。
もう一つ聞いておかねば。
「ここって魔法とかある?」
「魔法?」
カリンはキョトンとしている。
「知らない?こう、炎を出したり、傷を直したりする不思議な力っつーか」
「お伽話では聞いたことはありますが、私実際に見た事は…」
あ、そう?
じゃあ俺が魔法スキルでババっと解決しちゃうかなー?
って、俺のスキルって何?
今のところ何も特殊能力がついた気はしないんだけど。
けどカリンは続けて、
「私が見た不思議な力はヒロキが現れたことでしょうか」
確かにそうかも。
「私は神が住まうというあの丘で、村をお救いくださいと祈っておりました」
カリンは俺を澄んだ青空色の瞳で見ると、
「だからヒロキが私達の村を救ってくださるのでしょう?」
そのために来たんだぜ!
何の力が付与されたか知らないが、俺は胸を張って村へと進んだ。
つづく
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