生贄の少女と異世界ぐらしwith 持ち物一つ
青樹春夜(あおきはるや:旧halhal-
第1話 持ち物一つ選べ!
ある日突然、「異世界に持っていくものを1つ選べ」と言われた。
男とも女ともつかない不思議な声だ。
俺は迷わず答えた。
「俺の部屋、まるごと」
「……ひと……」
「俺の部屋まるごとひとつ」
「いや、あの……」
「まるごとひとつ!」
「むぅ、仕方ない。では、行くぞ!」
「えっ?」
ぐるりと体ごと回ったと思った途端、俺は意識を失った。
気がつくと、俺は自分の部屋の真ん中に倒れていた。
もともと、どこに居たっけ?
おかしい。
何をしてたかも思い出せない。
けど、学校から帰る途中までの記憶はある。制服も着たままだ。
起き上がって、窓の外を見る。
「あっ!」
驚いたね。
俺の部屋は2階なのに、窓の外の風景は目線が低い。1階のようだ。おまけに見慣れた病院の壁も見えない。(俺の家は病院の隣だ)
そこに広がるのは見渡す限りの緑の野原。俺がいるとこは少し盛り上がって丘になっているようだ。
「ホントに?」
マジか。
マジで異世界に来てしまったのか。
いや、ただ野原の真ん中にいるだけで、俺1人の世界だったらやるせない。というか、やる気でない。
とりあえず俺は自室のドアを開けることにした。
ガチャ。
家の中の、薄い普通のドアだ。
それを開けた途端、目に飛び込んできたのは、目の前にひざまづく金髪の少女だった。長い髪を後ろでゆるくまとめていて、そこからこぼれた髪が白い頰にかかっている。
何かを祈っているようだったが、俺の気配を感じたのか顔を上げる。
かっ、かわいい……!
そして、俺は1人じゃ無かった!
少女は俺の顔を見ると、小さく声を上げて立ち上がり、さらに少し逃げ腰になった。
驚きと、恐れと、そして喜びとが混じり合った表情をしている。
「良かった……。お待ちしておりました」
「あの、俺……」
良かった、会話できてる!
いや、俺を待っていたってどういう事?
「どうぞ私達の村においで下さい」
「あ、はい」
と、一歩踏み出そうとして靴がない事に気がつく。俺は慌てて室内に戻ると、本棚の上に置きっぱなしのバスケットシューズを持って来る。少し前に部活を辞めたのだ。だからバッシュで外に出たって誰も文句は言うまい。
俺はそれを履くと、ドアの外に出た。
つづく
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