生贄の少女と異世界ぐらしwith 持ち物一つ

halhal-02

第1話 持ち物一つ選べ!

 ある日突然、「異世界に持っていくものを1つ選べ」と言われた。


 男とも女ともつかない不思議な声だ。

 俺は迷わず答えた。


「俺の部屋、まるごと」


「……ひと……」


「俺の部屋まるごとひとつ」


「いや、あの……」


「まるごとひとつ!」


「むぅ、仕方ない。では、行くぞ!」


「えっ?」


 ぐるりと体ごと回ったと思った途端、俺は意識を失った。


 気がつくと、俺は自分の部屋の真ん中に倒れていた。


 もともと、どこに居たっけ?

 おかしい。


 何をしてたかも思い出せない。


 けど、学校から帰る途中までの記憶はある。制服も着たままだ。

 起き上がって、窓の外を見る。


「あっ!」


 驚いたね。


 俺の部屋は2階なのに、窓の外の風景は目線が低い。1階のようだ。おまけに見慣れた病院の壁も見えない。(俺の家は病院の隣だ)


 そこに広がるのは見渡す限りの緑の野原。俺がいるとこは少し盛り上がって丘になっているようだ。


「ホントに?」


 マジか。


 マジで異世界に来てしまったのか。

 いや、ただ野原の真ん中にいるだけで、俺1人の世界だったらやるせない。というか、やる気でない。


 とりあえず俺は自室のドアを開けることにした。


 ガチャ。


 家の中の、薄い普通のドアだ。


 それを開けた途端、目に飛び込んできたのは、目の前にひざまづく金髪の少女だった。長い髪を後ろでゆるくまとめていて、そこからこぼれた髪が白い頰にかかっている。


 何かを祈っているようだったが、俺の気配を感じたのか顔を上げる。


 かっ、かわいい……!


 そして、俺は1人じゃ無かった!


 少女は俺の顔を見ると、小さく声を上げて立ち上がり、さらに少し逃げ腰になった。


 驚きと、恐れと、そして喜びとが混じり合った表情をしている。


「良かった……。お待ちしておりました」


「あの、俺……」


 良かった、会話できてる!

 いや、俺を待っていたってどういう事?


「どうぞ私達の村においで下さい」


「あ、はい」


 と、一歩踏み出そうとして靴がない事に気がつく。俺は慌てて室内に戻ると、本棚の上に置きっぱなしのバスケットシューズを持って来る。少し前に部活を辞めたのだ。だからバッシュで外に出たって誰も文句は言うまい。


 俺はそれを履くと、ドアの外に出た。


 つづく

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