第3話 険難

デスクの人は愛想よく言った。

「どうぞ、こちらへ~。何の用件でじょうか?」

「依頼をうけにきましたが、こちらの依頼書です。」

「はい~!確認します~。」

職員さんは早戸の依頼書を確認した。

「ハンナス様の依頼ですか。依頼の方なら、32番街のローレク商会の人ですね。連絡を入れましたので、少々お待ちください。」

職員さんの言葉にしたがって管理所で30分ほど待ったら、職員さんが誰かを連れてきた。

「こちらの方がハンナス様です。そんで、こちらの方が依頼の受け人の早戸様です。」

「はじめまして、依頼受け人の早戸です。」

「どうも。」

職員さんに紹介してもらったが、なんだか愛想ない人だった。

「では依頼が成立したら、デスクまで、お越しください。」

職員さんが場を去り、早戸と依頼主のハンナスだけが残った。

ハンナスは職員さんが去り、口を開いた。

「申し訳ないが、この依頼はなかったことにしよう。王都まで行けなくなっちゃたからな。」

ハンナスの言葉で、早戸の頭の中は真っ白になった。

「。。。え?どう意味ですか?」

「どうもこうも魔獣たちが暴れあがって王都への道が閉ざされたんだよ。それにこんな貧弱な体した奴を雇えるか。」

ハンナスは早戸の体を見ながら皮肉を言った。そして、やめだやめ~と言いながら場を去った。

早戸とマリはその場で立ち止まった。

それを見ていった管理所の職員さんが早戸たちにやってきた。

「依頼は。。。不成立のようですね。他の依頼でも紹介できますが、どうします?」

「ありがとうございます。。。」

早戸は曇った顔でデスクに向かい、依頼を探した。


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翌日、急に穴ができたお店で急募の依頼がきて、早戸とマリが働くことになった。

「はい~!お待たせしました。焼き鳥とチャーハンです。」

「こちらも注文~!」

「はい~!」

早戸はお店のホールでマリは厨房で働くことになった。

初めはマリがホールで働くつもりだったが、人見知りのマリは注文ももらえず、ただ立ったままになった。そこで、仕方なく早戸がホールに入ることになった。

マリのウエートレス姿も可愛かったけど、エプロン姿も可愛い~!

そんな思いは墨においてただ働き、夜になってようやく仕事が終わった。

「はい~。これで、今日の営業もおしまい。また来週もよろしくね。」

「はい。お疲れ様です。」

この店で働いてもう一週間がすぎた。

このお店で働いてわかった事がある。

一つは魔獣と呼ばれる化け物たちが最近活発に活動してきて王都への道が閉ざされたこと。

そして、二つは王都へ向かおうとする商会の人たちが用兵を集めて、魔獣討伐を企んでいることだ。

はじめは諦め半分で、この仕事を始めたが、色んな客の話を横耳できて、いい情報をもらえるようになった。そのおかげで、冷静に考えるようになり、新たな突破口を探せるようになった。

翌日、休みをもらい、早戸とマリはローレク商会に向かった。

ローレク商会には人だかりができていた。

早戸は人だかりの中心に向かい、掲示板に張られた文字を読んだ。

「え。。。と。。。用兵募集。王都と行き来する道のまもり。ただし、魔物と戦えるものに限られる。そのテストを行い、用兵の仕事を果たした末には1万クォータを報酬に与える。・・・つまり、力検証が終わったら、用兵になれるし、王都にも向かうことができる。」

早戸はその掲示文をよんで、燃えてきた。

「これはチャンスだ。マリもそう思わない?」

「うん。多分これが最後の機会。。。」

マリと早戸はお店の仕事をやめ、用兵志願を済ませた。

用兵試験は町の闘技場で行われる。

志願した人たちは筋肉だらけの男たちだけだった。

それらは早戸とマリを見てヒソヒソ笑った。

そのなかの一人が早戸に近づいてきた。

「おやおや~お子さまが来る場所じゃないぞ~さっさと家に帰っておままごとでもしろ~!」

早戸はそいつを押し離し、宣言した。

「俺とこいつは用兵志願にきた。文句を言われる筋はない。」

早戸の言葉にその場の人たちが笑いだした。そして、さっきの人は早戸の首もとの裾を掴んできた。

「最後にいう。さっさと帰れ。子供の遊び場じゃない。命かけの場所だ。」

早戸は彼の手を離し、彼に話した。

「こっちも遊びできた分けじゃない。それに、お前よりは俺の力が上だ。」

そういって早戸とマリはその場を立った。

その場に残ったやつらは不機嫌そうにいう。

「あいつらなんだ?」

「さぁ知らん。次に会ったら殺してやる。」

「調子に乗りやがって。子供だからって手加減しないからな」


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テストの内容は盗賊の襲撃に対する対応力と魔物を撃破できる強さ、そして強敵に対する力を評価する。

このテストの参加者は100人ほどだった。

その中で合格した人はだった10人、早戸とマリもその十人の中だった。

早戸とマリは合格した連中とロレック商会の中央ホールに残って待っていた。その中で、早戸に嫌がらせをした奴もいた。

「何?!なんであいつが残ってるんだ。おかしいだろう?!!何かいかさまををしたはずだ!!」

早戸は彼の視線を感じたが、何も言わず無視した。

そして、依頼主がきた。

「よくここまで来てくださってありがとうございます。自分はこのロレック商会の総管理人のミシズです。よろしくお願いします。」

総管理人だと言い切った彼は皆に軽くお辞儀をした。

「皆さんに依頼する内容は荷物運びの警備そして、王道へ導くこと。それが成功した明かしには1万クォータを報酬にします。ただし命の保証はないので、注意してください。」

そういい、彼の演説が終わった。

その場にいた連中は皆お金のことに盛り上がって大声をだした。

「実にいい!!1万あったら何でもできるぞ!!!」

「ヒヒヒ!俺はもっと奴隷を買ってやる!!!」

早戸はお金にそんなに窮してないため、彼らには同調せず、その場を去った。

そしたら、後ろから声を掛けられて早戸は声がする方を見た。

「お前。よく残られたな。どうやった?!!」

「どうってなんだ?」

「とぼけるな!!!如何様に決まってるだろうが!お前みたいなもやしやろうがこのテストに通るわけねえだろう!!!」

彼は早戸に拳を振るった。

しかし、彼の拳は早戸に届かず、止まった。

早戸は彼の手首を握りねじて、折った。

「グアアアアアア!!!!!!!!」

男の手首は曲がってはいけない方向に曲がっていた。

「言ったろ?俺には勝てないと。」

彼の苦しむ顔を見て早戸は仕方なく彼の手首をもとに方向に戻した。男はその場に倒れて、早戸はマリとその場を去った。


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ロレック商会は王道に向かう準備を終え、いよいよ出発の日がきた。

「君たち用兵はこれから俺らの兵士とともに戦っていだだく。変な真似をしたらその場で殺すので注意するように。以上」

指揮官らしき者は早戸たちにそういい、兵士を渡した。

早戸とマリは10人ずつ兵士もらった。守るべきものは王道に納品する品と貴族。幸い、早戸たちに当たった貴族はまともな人で話が通じた。

「用兵さんでいらっしゃいますよね。初めましてモリスと申します。」

モリスが手をだした。早戸もモリスに手を伸ばし、握手した。

「早戸と申します。こちらはマリ、俺の同行者です。」

マリが短く会釈した。

「へえ、旅人ですかもしよければ、旅の話を聞かせてくれませんか?王道まで暇ですし。」

「いや。。そういうわけには。。。」

早戸が困った顔をした。しかし、モリスは早戸とマリを引っ張り、馬車に乗せ、出発した。


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「まあ!素敵な出会いですね~羨ましいな~私も旅したいです。」

モリスは窓際を眺めながら言った。早戸も自分の旅話を広げるのは嫌いじゃないから悪い気分じゃなかった。

「モリスさんはどんな目的で王道にいってるんですか?」

「王国に届ける品が主な目的かな。それと。。。」

モリスはくちごもり、少し照れ臭そうに言った。

「旅をしたかったです!」

それを聞いて早戸は笑顔を浮かび、取っておきの話をしようとした。その時、馬がとまった。

「モリス様、少しあらわげになります故、内でお待ちしてください。」

兵士たちがそういい、早戸とマリも外も状況を把握しに馬車を降りた。

早戸が外にでた瞬間、兵士一人がぶっ飛ばされて馬車にぶつかった。

早戸は回りをみた。

「あれが魔物か。」

鹿のような角と長い尻尾、そして両足でたっている二足歩行の生き物。魔物の力と言うと普通の人間が30人ほどかかってようやく殺せるものだ。

それに魔物は一匹ではない。10匹ほどの魔物が早戸たちを囲んでいる。

一匹でも厄介な魔物が十匹もいる。兵士たちは震えてきた。

「あれに勝てるわけがねえ。。。。!」

兵士たちはあとじさりした。しかし、早戸はむしろ前に進んでいく。

魔物は怯まない早戸をみて一瞬戸惑ったがすぐ腕をふって早戸をなぐりかかった。

「くああああああ!!!」

しかし、悲鳴を声を出したのは魔物だった。

早戸は魔物の腕をひねた。魔物は早戸によって投げられ、他の魔物に当たった。

「あと、八体か。」

早戸は高速で走り出し、瞬時に魔物を制圧する。

「。。。」

後ろで早戸をぼうと見ていた兵士たちはなにも言えないまま、その場に固まる。

早戸は呆れ顔の兵士たちをみて一瞬戸惑ったが、モリスがその場を収めてくれた。

「ま~早戸さんを選んだのは正解でしたね。魔物を一人でやったひとなんて聞いたこともないです!」

馬車に戻ったモリスは早戸を褒めたたえた。

「滅相もないです。俺は自分のことをやっただけです。」

「やはり、騎士様は格好いい~いっそう結婚を申し込むかな~」

「そんな。。。冗談を。。」

早戸は照れ始めた。横でやり取りを見ていたマリは頬を膨らませてる。

「モリスさん、一つ聞きたいことがあるけど、どう考えても護衛が弱くない?兵士十人なんて俺がいなかったら全滅だったぞ?」

「そうですね~だから早戸さんを選んだのが正解かなと思ってますよ~」

モリスはにこにこ笑いながら答える。もしくは貴族の中でも貧相な家門かもしれない。

「一万クォーターが報酬じゃなかったら俺、参加してないぞ。。。」

「それでいいんです。早戸さんがない仮定は仮定に過ぎません。ここにあるのは早戸さんがいてくれて私が救われた事実だけです。」

モリスは笑顔を見せてくれた。なんかもやもやして納得行かないが流すことにした。


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その後も魔物の襲撃をうけることはあったが、そのたびに早戸が追い払った。

早戸は紙とペンを用意して、文字と絵を書き始めた。

「何してますか?」

モリスは早戸のことをじっと眺めた。

「今まであった魔物について記録してることろです。それとこの辺の地帯と道探しも兼ねてます。」

「すごいですね!やっぱり、冒険家は本物っていうか憧れます!」

「そんな大したことはありませんが、ありがとうございます。。。」

「あそこに何か見えます!!」

早戸とモリスは会話のやり取りをやめ、兵士の呼ぶ方向をみた。

馬車の前に一人の男がたっている。

「なんだ?俺たちはロレック商会の者だ。道を開けろ!」

「•••」

男は何も返せなかった。

「おい!聞いているのか!•••」

その時、肉が千切れる音がして、兵士の腕が切られた。

「くああああああああああ!!!!!!」

兵士は悲鳴をあげた。

「きさま!!!!!!」

兵士たちは一斉に男にかかった。

しかし、兵士たちが剣を振るたびに、兵士たちの腕が切られた。

兵士たちは動くこともできず、倒れて悲鳴をあげた。

その惨劇を目の前にした兵士は怯えながらその場をにげた。

「これは•••!」

早戸は外の様子を見に馬車から出たが、兵士たちは腕を切られ動くこともできず、全員死んでいた。

死体の中にいるのは一人の男だった。

刀のような長く鋭い剣を握っている青年だった。

適度な筋肉と動きをもった人間に見える。

「軽い相手は無さそうね。。。!」

早戸は死体の中で剣一本を拾い、男に向ける。

相手の能力を知らない以上、下手に攻撃することはできない。

早戸と男の間で妙な緊張感が走り始めた。

男は一瞬で早戸に近づいてきた。

早戸は男の剣をギリギリ受け止めた。

男は無表情のまま、早戸を攻撃し始めた。

しかし、受け止めるだけでは勝てない。

早戸は男の動きを読み始めた。目をすっと閉じたまま、男の動きを予測する。

男は自分の動きが読まれたのを気付き、後ろ下がった。

(逃がさん。。。!)

男に隙が生じ、早戸は彼の腕をとった。

男は反抗したが、握力に逃れず、捕まったままだ。

しかし、男は自分の刀で腕を切った。

「しまっ!」

早戸は予想してない状況に戸惑った。

その隙を持って男は逃げさった。

「······」

その場に残ったのは早戸とマリ、モリスだけ。馬車を引いたことのないため、これからどうすればいいのか分からない。

「どうすればいいんだろうな。。。」

行くか帰るかを決めなきゃならない。

「早戸さん馬車は引いたことありますか?」

「子供の時、面白半分で乗ったことあるだけです。」

「それじゃダメでしょうね。。。」

モリスは明らかにがっかりした。

早戸は御者台に座り、馬を優しく触った。

「ごめん、俺のせいで荒くなるかもしれない。でも、お願い。モリスを王道に連れて行きたい。お前もそうでしょう?」

早戸の優しい声を聞いた馬は平穏な顔をして声を出した。

「ヒヒ~ン~!」

「よし、いきましょう!モリスさん!」

早戸の顔をじっと眺めていたモリスは早戸の呼び声に気を戻り、あわてて馬車に乗った。

「あ、はい!!」

モリスとマリが馬車に乗り、早戸は馬車を動かした。

「このまま王道に向かいます!」

馬は早戸の指令に会わせてガタガタ走り出した。

早戸はぎこちない感じだったが、すぐ馬になれてすべらかに動かした。

早戸のおかげで予定通り、王道に着けそうだ。

日がくれ、早戸たちは馬車を止め、野営の準備をした。

「すごいです!早戸さん本当に初乗りでしょうか?!」

「ありがとうモリスさん。でも、こいつのおかげだから、感謝はこちらに。」

「ありがとうです。馬さん~!」

「ひひ~ん~!」

馬は心地良さそうだ。

「それじゃ、もう休んでくれ。明日も朝早くから移動するから。」

「いいんでしょうか?早戸さんが一番疲れてるんじゃ。。。」

「大丈夫、早戸には私がいるから。」

マリは自分が見張りをすると言い出した。

「いや、マリも休んで、ヤバかったら呼ぶから。」

「ダメ、これは私の役割、早戸より探索は得意だから。」

マリの頑固さで早戸は諦めて従うことにした。

「それじゃ。。。頼めるか?」

「うん!」

馬も早戸もモリスも眠りに入った時間にマリは夜空を見ながら時間を潰した。

一人の夜は時間が過ぎない。

その時、マリの肌に冷たさを感じた。夜の空気は寒い。

マリは毛布をかぶったがそれでも寒い。

マリは一瞬魔力の気配を感じた。

「早戸と起きて。。。!」

マリの呼び声に早戸は剣をとった。

「敵か。。。!」

「多分。。。魔力の気配を感じる。」

早戸たちの周りに霧がわいてきた。そして、その中から無数の魔物が出てきた。

石のように体が硬く、ゴーレムみたいな姿をした魔物が20体以上ある。

「あれも魔物か。。。!マリ、モリスを頼む。」

「うん。分かった。」

早戸はそういい、走り出した。

ゴーレムは足で早戸を潰そうとするが、早戸は加速して、攻撃をよける。そして、ゴーレムの懐にもぐる。早戸は剣を抜いてゴーレムの腹を切った。

石が裂かれる音がしながらゴーレムは倒れた。

次々と早戸の剣にゴーレムは倒れていく。

「これで終わりだ。。。!」

20体以上の魔物を一瞬に倒した早戸は息が詰まって苦しい。

まだ体力は残っているが、少し休まないと。。。

「早戸危ない。。。!」

早戸はマリの呼び声に反応し、ゴーレムをみた。

ゴーレムは元通りになり、早戸にかかってきた。

マリは早戸の変わりにゴーレムの攻撃を食らって吹っ飛ばされた。

「マリ!!!!!!!!!!!」

早戸は心臓を掴みながら、マリに行く。

マリは外見上異常はないが、気を失い、倒れている。

「ちくしょ!俺のせいで。。。!」

ゴーレムは早戸に向かっていく。早戸は剣をとり、ゴーレムに突っ込んでいく。


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「はぁ。。。はぁ。。。」

早戸に切られたゴーレムはまた再生を繰り返した。しかし、ゴーレムの動きが前より、鈍くなった。

戦闘が始まり、もう5時間以上たった。早戸の体力ももう限界。

マリはまだ、起きてない。

「モリスさん!聞いてください!今から、マリをつれてここから逃げます。ゴーレムは俺が相手しますので、逃げてください!」

「・・・」

しかし、モリスは馬車から出てこない。

「聞いてますか?!!!」

「・・・」

返事がない。

その間もゴーレムは早戸を攻撃してる。

早戸はゴーレムの攻撃をよけ、馬車に向かった。

その中にはモリスがいたが、なんだか苦しんでる。

「どうしたんですか?!!!」

「はぁ。。。はぁ。。。」

うめき声をしながら、熱を出した。

マリもモリスも行動不能な状況、そして、周りにはゴーレムが囲んでいる。

その間も、ゴーレムが近づいてくる。

(どうすれば。。。)

早戸はモリスを背中に負って馬車を出た。

馬車の前にはもうゴーレムがいた。ゴーレムは腕を振るい、馬車をつぶした。

ゴーレムの攻撃をよけ、高速で走り出した。

しかし、疲れのせいか、足の力がぬけて倒れてしまった。

「っ。。。!」

ゴーレムは早戸を踏んだ。踏んだはずなのに。。。

「マリ。。。!」

マリはゴーレムの足を支えている。そして、両手でゴーレムをつかみ、投げた。

「・・・」

ありえない状況に何も言えない。

残りのゴーレムは次々とマリによって飛ばされた。

やがって、魔力の気配が消え、ゴーレムと霧が消えた。

きしむ体を起こし、早戸はモリスの状態を確認する。

「高熱。。。風では無さそうだが。。。」

医学に関する情報がない早戸にはどうすればいいのか分からない。早戸は病にあったことがないため、考えたこともない。

「マリ。。。どうすれば。。。」

早戸がおたおたし、マリはモリスを背負って言った。

「行く。時間ないから。。。」

マリはそういい、走り出した。

「おい!ちょっと。。。!」

早戸は馬車を引いてマリに着いていく。

しかし、なぜかマリが走る速度が馬より早い。

「早っ。!ついていけない。。。!」

どんどん、マリは遠ざかり、早戸の視野から消えた。


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道場には早戸だけ。

疲れきったのかもう走れない。マリも心配だが、ここで休むべきだろう。

「少し、不安だな。。。これからどうすれば。。。」

マリのこともモリスのことも魔物のことも何も分かってなかった。そして、自分の力の足りなさをイヤほど感じる。

自分の両手をみた。風で凍った手を動かす。

「。。。何が王国軍だ!女の子一人も守れないくせに。。。」

情けない。情けない。情けない。なさけない!!!

雨が降ってきた。世界は雨の音だけ。

そんな静寂を破ったのは馬だった。

「ヒヒーンー!」

馬は早戸を蹴った。

体の力の全てが抜けたせいで、倒れて土だらけになった。

力がでない。動きづらい。。。

早戸は顎をやっと動き、馬を見た。

馬は馬車と繋がれていた網をほどこうとする。

もがき始めた馬の中で、磁針のようなものが落ちた。

早戸は気を戻し、それをみた。

平凡な磁針だ。しかし、壊れたのか早戸が持っている磁針の差しが違う。

「雨に濡れて壊れたのか。。。いや違う。。。これは雨や火にやられてももつように箔貼りされている。ならどうして。。。」

早戸はようやくそれに気づいた。

「そうか。。。!魔道具か。。。!」

魔法を感じられない早戸には気づきにくいものだ。しかし、モリスの馬と言えば貴族の物。貴族は魔法を使える人間。そして、磁針の方角はずっとマリの方角を指している。そういうことは。。。

「これはモリスの居場所を示す道具かもしれない。。。!そうだろう?」

そう考えが及んだ早戸は馬を見た。馬は気がすんだような顔をする

「ヒヒーン!」

そして、馬は早戸をつまんで背中に乗せようとする。

「ありがとう。。。お前のおかげで勇気がでた。モリスとマリを探そう!!」

「ヒヒーン!」


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「だいぶ、近づいたか。」

休むこともなく勢いで走った馬はもう限界なようで、横に倒れてあえぐ。

「お疲れ、相棒。君のおかげで、ここまでこれた。後は俺に任せて休んでくれ。」

早戸は枝や葉っぱで馬を隠した。

「おかしい。。。磁針の先が変わらない。。。どこかで止まったということだが。。。道にまよったか?」」

早戸は磁針の先に近づいた。その時、森の霧がこくなり、その中から魔物が湧いてきた。

「またゴーレムか。。。!」

早戸は剣を構える。

しかし、ゴーレムを倒せる方法はない。以前、苦戦した経験があり、戦略を建て直す必要がある。

早戸はゴーレムとの距離を起きながら周りを見回した。

ゴーレムは魔物でありながら、人の手によって作られたもの。

呪術師が産み出して、世をさまよう魔物だ。

この森で二度も会うのは偶然ではないはず。

そういうことは魔物を操る術師がいる。そして、その呪術師は何らかの目的で早戸を攻撃している。この理屈が合うなら。。。

早戸は目を閉じ、全身の感覚を活発させた。

その間、ゴーレムは腕をふるい、早戸を攻撃する。

しかし、早戸は気をよみ、ゴーレムの攻撃を避けた。

そしてゴーレムの後ろから人の気配を感じた。

早戸は走り出し、ゴーレムの向こうに突撃する。

「お前が主犯か。。。モリス!」

そこにいるのはモリスだった。

「見つかってしまいましたね~早戸さん。」

「どういうつもりだ!マリはどこにいる!!!」

「そんなに焦らなくて大丈夫ですよ~マリさんは睡眠術で眠らせてました。」

「てめっ!!!」

早戸はモリスを切る。しかし、モリスの形態は消え、煙に変えた。

「これは私の魔法です。幻影を見抜けない限り、私には勝てません。」

霧の中で無数のモリスの幻影が現れた。そして、ゴーレムは早戸に押し掛ける。

「秘技。。。つむじ風!!!」

ゴーレムは石くれになる。しかし、すぐ元通りになった。

「ふふっ無駄です。あなたは私に勝てません。」

早戸は冷静を戻し、深呼吸した。そして、目を閉じた。

「もう諦めましたか?残念ですがここで死んでください!!!」

ゴーレムは早戸に押し掛ける。しかし、早戸は目を閉じたまま、攻撃を避ける。そして、飛躍し、一瞬でモリスの前に着いた。

早戸の剣の先がモリスの首に当たっている。

「お前が本物だ。」

モリスは慌てない。

「私が本体じゃないとしたら貴方の敗けですよ?」

「いや。確実にお前だ。私は加速が得意ではない。気を読むのが得意だ。」

早戸の冷たい目線を感じ、モリスの額から汗が出た。

「参りました。私の敗けです。」

モリスはマリを早戸に渡した。

「マリを起こせ!」

「そう怒らなくても大丈夫ですよ~ただ寝ているだけです。」

マリは心地よく眠っている。

早戸はマリを背負い、その場を立つ。

「待ってください。早戸さん!」

早戸はモリスを睨み付ける。

「まだ用があるのか。」

「いいえ。。。その。。。私がなんでこんなことをしたのか教えます。」

早戸は聞かないつもりでいたが。。。モリスの顔を見て気持ちを変えた。

「私の名前はミシズ モリス。ロレック商会の管理人の娘です。」

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機械兵のハヤト @hayuyakana

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