とあるあに(もしくはあね)の過去回想

 椿達を女装させた週末の朝。いつものように部屋で資料を整理していると、

コンコン

控えめなノックが二回鳴った。

「もみ兄さん居る?ちょっと相談があるんだけど...」

訪問者は楓だった。軽く部屋をなおしつつ、

「おう、鍵開けてるから勝手に入っていいで」

と、声を掛けると楓がおどおどした様子で入ってきた。そのまま、部屋から持ってきたであろうクッションに座る。


「・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


 楓が話し始めるのを待っていると、無言のまま時間が過ぎていく。

しゃーないな、よっぽど話づらいんだろうな。そう思って、無難な話を振ってみる。


「そういやだけど、この間撮った写真、桜にだいぶ好評だったよ。桜の弟さんも「えっ、全員男の人なの?すごい技術だね」って驚いとったらい。あの子も相当に素質がありそうやったけどな。あの子もいつかコーディネイトしてみたいな」


最後、なんか変なフラグが立った気もするけど、まあうまいこと、話の糸口にはなったやろ。なんて思っていると、楓が衝撃的な言葉を発した。


「そう、相談したかったのはそのことなんだ。もみ兄さん、僕をもう一度オンナノコにしてくれないかな」


はぁ?なんでやねん!


そう言って、全力でツッコミたかった。けど、楓の目が余りに真剣やったんで、取りあえずツッコミを飲み込んで、質問を代わりに吐き出した。


「何でそう思ったんや?前回は拒否しなかっただけでそこまで乗り気じゃなかっただろ」


「えっと、それはつば...いや、なんでもない。気に入っただけ。そう、この前の格好が気に入っただけ。うん、それだけだから他の理由なんて気にしないで」


 理由を尋ねると、楓は顔を赤らめて普段の1.5倍の早さでまくし立ててきた。思わず心の中でにやにや笑ってしまう。あー、そっか。まー前からお兄ちゃん子だったもんな、そんなお兄ちゃんに可愛いって言われたら落ちてまうよね。ん?

{でも、二人はやろ、頭おかしいんやないか}


耳元で囁く悪魔モラルの声を追い払う。黙れや。誰を好きになったっていいだろう


「どうしたの?もみ兄さん。うれしそうな顔になったり、急に険しい顔になっりして」


脳内で悪魔モラルと戦ってると、楓が顔を覗き込んでいた。近い。楓の幼さ全開の可愛い顔から慌てて目線をそらす。世のショタコンの方々の気持ちが少しわかった気がする。


「ちょっと悪魔と喧嘩してただけや。大丈夫、椿兄ちゃんに可愛いって言わせられるようにするから、安心しぃ」


「椿兄ちゃん」をちょっと強調して言うと、楓は思った通りのおもしろい反応を示してくれた。


「はにゃ!?なんでここで椿兄さんの名前が出てくるのさ。全然関係ないじゃん。そりゃ可愛いって言われたら嬉しいだろうけど、別にあの戦略級魔法みたいな魔法の言葉を言ってくれるのが、椿兄さんじゃなくてもいいんだからね」


ツンツン楓を愛でながら、話をに進める言葉を紡ぐ。


「ほな、とびっきり可愛い服を買いに行こか」



更新一か月以上あけてしまってごめんなさい。

過去編はもう1,2話続きます。その後、一回人物紹介入れます

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