とあるおとうとの過去回想1

 僕、橘楓は自分のことをオトコノコだと思っているはずだ。なのに


~五年ほど前~


「なあ、楓。これ着てくれ!」


が学校から帰ってくるともみ兄ちゃんが土下座していた、しかも、隣にはもみ兄ちゃんがよく着ているオンナノコの服がある。 何だろう?この状況。しばらくぼうっとしていると、二階からひょっこり顔だけ出したつばき兄ちゃんがフォローをしてくれた。


「樅兄さん、楓が混乱してるだろ。僕にしたみたいにちゃんと説明しろよ。そしたら僕みたいに仕方なしとはいえ協力してくれるかもしれないだろ」


「ああ、そうやったね。忘れてたよ、ごめん。という訳でだ、楓、ちょっと女装してくれ」


「いいよ」


もみ兄ちゃんがいつもしていることだし、いつもお世話になっているもみ兄ちゃんのお願いなら聞くに決まっている。


「本当か、ありがとう!じゃあ、早速着替えよっか。」


もみ兄ちゃんが僕の手を引いて二階へ連れて行く。そこにはオンナノコの格好をした、つばき兄ちゃんがいた。しかも、全然似合っていなくて、もみ兄ちゃんみたいにカワイクなれるものだと思っていた女装が、少しだけ怖くなった。


 でも、そんな僕にお構いなしでもみ兄ちゃんは僕の服を引んむいて、お人形さんみたいにするみたいに、服を着させていく。


「楓はまだ顔立ちがはっきりしてないから、あんまり手加えなくて良いな。ちょっと眉毛だけ消すか。椿はちょっと男の子っぽくなってきてるから、いじり甲斐有るな」


 聞こえてくることばが怖くて目を閉じる。そして、もみ兄ちゃんに「もういいよ。目、あけてごらん」って言われて目を開ける。左手首に巻かれた時計を見れば、数十分にも思った着替えの時間は、たったの十分ぐらいだった。 


 ちょうど、つばき兄ちゃんが「十分たったけど楓の着替え終わった?」と、言いながら部屋に入ってきた。化粧をしているおかげか、さっきよりも怖くないけど、でもやっぱりオンナノコには見えない。そんな事を思っていると


「すごく可愛いな。とてもじゃないけど男には見えないくらいだよ」


「うん、やっぱり、似合うな。素材が良いと楽しいな」


って、つばき兄ちゃんと、もみ兄ちゃんがほめてくれた。その後、もみ兄ちゃんを中心に兄弟三人で写真を撮った。(どうやら三人の写真を桜さんがごしょもうだったらしい。「相変わらず樅兄さんは桜さんに、甘いよな」って言ってつばき兄ちゃんが笑ってた)



 その日の夜、眠りにつこうとする、僕の脳内でつばき兄ちゃんの「すごく可愛いな」って言葉がずっと脳内で繰り返されていた。

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