とあるきょうだいの登校風景2

「おはよう。変態兄弟」


 僕達が振り返るとそこには柊桃ひいらぎももがいた。彼女は僕らの古馴染みに分類される人で、小学四年生のときに彼女が引っ越して、離ればなれになってしまうまでご近所としてよろしくやっており、去年、高校の入学式で再会した。男としての橘楓を知る人のいないところで頑張ろうと、少し離れた高校に入学した僕達の目論見は呆気なく初日で崩れ去ってしまったというわけだ。その時一騒動有ったのだが、一ヶ月ほど経った今では楓を敵視することで楓の変貌を受け入れている。(受け入れているとは決して言い難いが)ついでに僕まで彼女に敵視されているのはすごく悲しいのだけれども。


「おはようございます。桃お姉さま」


「おはよう...じゃないわよ。なんでアンタみたいな奴にお姉さま呼ばわりされないといけないのよ。変態が移るわ」


「変態?誰のことや?」


達みたいな人のことよ」


「お兄様!今の桃お姉さまの「あなた達」って言葉、絶対にオトコの人に使う方の貴男でしたよね。オンナノコに対して失礼じゃありませんか」


楓よ、どうして僕に話を降る。


「うん、まあ、完全には否定しにくいよね。戸籍上は全員男だし」


お茶を濁した僕の発言にショックを受けたのか、楓は急に走って行ってしまった。しかも口で「うわーん」とか言いながら。

 ひんやりとした視線を受けて後ろを振り向くとジト目をした二人が立っていた。そして口々に言う。


「あーあ、アンタがあんな言い方するから楓ちゃん泣いちゃったじゃない」


「椿、お兄ちゃん失格やね。幼馴染優先させて妹泣かすなんて」


二人の言葉で簡単に死ねる。というかもう、楓に泣かれて、逃げられて既に僕のヒットポイントはゼロだ。ただ、僕らの頼れるお兄ちゃんはそのまま死なせてくれなかった。


「椿、このままやと楓に嫌われたままやで。それが嫌ならどーすべきかわかっとんな」


殴打による心肺甦生を受けた僕は楓が走っていった方向に向けて走り出した





~~~~~


「あーあ、このまま気まずくなってくれたら、優しい言葉でもかけて落とそうと思ってたのに。恨みますよ、お義兄さん」


「諦めるにはまだはやいんとちゃうか。まだ自分の気持ちがはっきりしとらんみたいやし。人の恨みは怖いからな。なぁ義妹候補さん




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