第6話 家
とは言えど、その様に書かれていて此方からそれなりに発展するという訳では無い。
俺は赤面でとてもじゃ無いが、羽島を見れなかった。
とてもじゃ無いが恥ずかしかったのだ。
生まれて初めての.....しかも恋している女の子からの告白なんて.....普通は跳ねて喜んで良いぐらいだと思う。
俺はそれなりに自分という個性が有るのでやらないが.....。
でも本当に本当に嬉しい。
それを表現するなら簡単に言うとこの人生で死んでも良いぐらい。
そんな感じで有りながらのその日の昼食時。
俺は高木と高島に断りを入れて(今度何か奢ると言う約束で)羽島と俺はまた屋上に集まっていた。
そして弁当箱の中身を食べる。
2人で黙々とベンチに座って、だ。
雲一つ無い青い空の下。
相変わらずの美味しさだった。
ただ、風が強く羽島の女の子の香りが.....。
俺は気を紛らわせようと赤面になる顔を振ってから羽島を見る。
それから意を決して聞いてみた。
「.....あの」
「.....何?」
「.....これ.....この弁当は羽島が作ってるのか?」
「.....そう」
柔らかそうな唇がモニュモニュと小さく動いて言葉が聞こえ、そして羽島の言葉は簡単に途切れた。
まるで蜘蛛の糸で作られた糸電話の様に柔く、だ。
会話が途切れたとも言えるかも知れないが.....。
俺はその為、内心、心臓をバクバクさせながら.....考えていた。
あの全く振り向かない羽島が.....俺を好いている。
有り得ない事態に、だ。
そうドキドキしながら考えていると。
いつの間にか真顔の羽島がこっちを見てジッとしていた。
俺をその綺麗な顔で見つめる様な形で、だ。
な、何だろうか。
俺は赤面しながら、汗をかく。
「.....手紙.....」
「.....あ、ああ。読んだが.....」
「.....そう。.....そういう事だから」
「.....あ、ああ?」
プイッと横を向く、羽島。
俺はそんな羽島をよく見ると.....って言うか。
一瞬しか見れなかったが、羽島が紅潮している様に見えた。
それは多分、見間違いだろうけど.....。
「チャイムが鳴る。急がないと」
「.....そ、そうだな!」
「.....テスト」
「.....は?」
テスト。
その言葉に俺は目をパチクリする。
テストは大丈夫?と聞きたいのだろうか。
その様に無理に理解しながら顎に手を添えてウーンと考える。
ただ、テスト、と。
それだけ言って、口を動かさなかった。
だが、ジッと俺を見てくる。
「.....えっと.....その.....」
「.....教えてあげる」
「ふ、ふえ!?」
ボッと音が鳴る様な赤面で俺は俯く。
これじゃどっちが女の子か分からないでは無いか。
俺はその様に思いながらも羽島に何とか顔を向けれた。
ぎこちなく、ロボット人形の様な感じだが。
「.....有難うな、羽島」
「.....別に。テストは大切だから。それだけ」
(私は貴方が好き)
「.....」
何で今それを思い出すのだ。
俺はその様に思いながら、首を振った。
そしてご飯を見つめ、食べるのを再開して。
羽島と共に食べ始める。
☆
「お前さ.....飯島」
高木が俺に腕を組みながら、不満そうに話してくる。
戻ってから5時限目の休み時間だ。
俺は高木に椅子に座ったまま?を浮かべて話す。
「.....何だ」
「何だ、じゃねー。良いか。お前が羽島と一緒に飯を食っているという事がSNSとかに拡散しているぞ!!!」
「おうとも。どうやってあの羽島を落としたんだって事になってんぞ!?それから羽島が好きな奴ってお前じゃ無いのか!?って事にもなってんぞ!」
俺は.....その言葉に少しだけ羽島を見て。
そして赤面しない様にしながら、高木と高島を見た。
あの手紙の言葉を思い出しながら。
「.....すまんって.....ごめんな。そんな関係じゃ無いから。なんか本の事で付き合えって.....」
「お前!もっと有り得ないだろ!俺も本の事で告白したけど失敗したんだぞ!漫画しか読まんお前が!?有り得ねぇ!何が起こっているか今直ぐに白状しやがれぇ!!!」
首を絞めてくる、高木。
クラスメイトも頷く様な仕草を見せる。
何も無いと俺は慌てながら否定する。
だが、その時間が終わるまで。
空気はざわざわしたまま、落ち着かなかった。
☆
「.....!?」
校門付近。
今日は練習が無いので、直ぐに高木と高島と共に帰宅しようとすると。
目の前に羽島が本を読みながら立っていた。
俺を見掛けるなり、少し明るくなりながらも直ぐに真顔になる。
忙しい奴だな.....。
「おー。2人のラブラブの始まりですか。では我々はこの辺りで」
「さらばですな。閣下。ハッハッハ#」
顔を見合わせるなり青筋を、また更にはフ●ックと中指を立てながらザッザッザと去って行く2人。
俺は違うって言ってんだろ.....と否定して呆れながらも。
大声で今度なんか奢るから!と言って2人と別れた。
あんなクソ馬鹿でも俺を応援してくれているのだろう。
そう、考えながら。
そして、目の前の正門の門の壁に背を預けている羽島に頬を掻きながら近付く。
羽島が俺の方を改めて見てきた。
相変わらずの可愛い真顔で。
「.....やっと来た」
「.....あー。すまんな。職員室に寄っていたんだ」
「.....」
無言で踵を返して、羽島は人目も気にせずに歩き出した。
何処に行くつもりなのだろうか。
その様に思いながら、羽島に聞く。
「羽島。何処に行くんだ」
「.....私の家」
「.....そうか。私の家.....ナィ!?!??」
まさかの言葉に、日本語で無い叫び声が出た。
俺は見開きながら羽島を赤面で改めて見る。
羽島は少し不愉快そうに俺に向いていた。
「.....嫌なの」
「.....嫌じゃねぇ.....ヨォ!?」
言葉にならない。
俺はその様に思いながら、ニヤつく顔を抑え気味にしつつ。
羽島に付いて行く。
ますます有り得ないな、本当に。
そう、思いながら、だ。
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