第3話 弁当

昨日、羽島がくれた紫陽花の押し花と本。

俺はその文字の書かれた紫陽花の押し花の事を.....聞こうとしたのだが直ぐに羽島は帰ってしまって聞きそびれた。

何故、紫陽花なのだろうかと思ったのだが。


高木と高島と別れて帰宅しながら俺は羽島がくれた本を河川敷で読む。

因みに今日は部活が早く終わった。

少し読む気力が有る。


因みに紫陽花の押し花の挟まっていた本は恋愛の本だった。

所謂、社会人の男と女の甘く切ない恋愛の本だ。

俺は.....少しだけ妄想を膨らませる。


だが、思いっきり否定した。

何故かと言われたらあの羽島だぞ。

有り得ないと言える。

全く男に興味が無い羽島だから。


俺はその様に思いながら本を閉じた。

そして河川敷の先の方を見て。

少しだけ嬉しさ故に笑みを浮かべた。


少しだけでも、ほんの少しだけでも。

俺は羽島と言う人間に近付けたのだろうか。

そう思うと余りに嬉しくなる。


「.....急がないとな。花梨と花凛が待っているし.....」


俺はその様に考え、本を仕舞う。

そして河川敷から立ち上がって錆だらけの自転車を転がした。

羽島の事を思いながら漕ぐとあっという間に家に着いて。

俺は自転車を手作りのボロい小屋に入れて玄関を見る。


「.....」


そうしていると玄関が勢い良く開き。

俺は驚愕しながら見つめると花梨と花凛が飛び出て来た。


「お兄ちゃん!お帰り!」


「兄貴、お帰り」


黒髪で右に髪をサクランボの髪留めで結っている、双子の姉。

顔立ちが幼いが、それなりに可愛い、小学6年生のお兄ちゃんと言う、花梨。


そして茶髪の左に髪をサクランボの髪留めで結っている、双子の妹。

顔立ちは同じ様に幼いがそれなりにやはり可愛い、小学6年生の兄貴と言う、花凛。


この2人の見分け方は髪の色だ。

そして呼び方で有る。

あと誕生日、4月と4月だが一日の差が有るから。

俺は飛び掛かってきた2人を見ながら頭を掻く。


「お前らな。いい加減にしろよマジで」


「だってお兄ちゃんに早く会いたかったんだもん」


「そうそう」


ニシシと八重歯を見せて笑顔を見せる2人。

俺は溜息を吐きながら、立ち上がってそして室内に入った。

花梨に顔だけ向けて聞く。


「お前ら、いい子にしてたか?」


「勿論!ね?花凛」


「そうだね。花梨」


全くな、妹ってのは本当に可愛いよ。

その様に思いながら、準備をする。

何の準備か。

それはまぁ、風呂とか飯だな。



この家は借家でボロ家だ。

その為、雨漏りをする。

だからバケツが必須。


因みに母さんは仕事だ。

コンビニ、ランジェリーショップのバイト。

俺は周りを見渡しながら、準備をする。


「おい!花梨!宿題しろ」


「えー。めんどーい」


「しろって。あとな。花凛。漫画を読みすぎんなよ」


「はーい」


全くな、コイツらときたら。

俺はため息交じりの感じで目の前のネギを切る。

そして出汁とかを確認しながら.....。



「.....」


あっという間に日は暮れた。

母さんも帰って来て、飯食って。

夜中24時を回った。

因みに俺の部屋は無い為、室内灯をなるだけ暗く灯しながら本を読む。


「面白いな。これ.....」


緑色のカバーの本。

俺はその本を読みながら頷いたり、涙を浮かべたり。

忙しくしていた。


本が読めないクソバカでも読み応えが有る。

俺はいつも漫画しか読まないから。

読めないかと思ったのだが。


「.....それで.....佳代子さん.....は、と」


ヤベェ、25時を回った。

寝ないといけない。

明日もテスト期間中だから。


俺は直ぐに手を伸ばしてボロライトを消してそして。

横になって寝た。



「おーっす」


「ウェーイ」


登校していると高木と高島が俺に声を掛けて来た。

自転車を押してくれる。

俺と一緒に、だ、有難い。


「で、読んだの?本」


「.....あ?ああ、あれか。面白かったぞ」


「ふーん。全く良いねぇ。羽島からの貰い物なんて」


そんなもんじゃねーから。

羽島はきっとコイツなら気が合いそうとか思っただけだろうけど。

俺に恋したとかそう言う事じゃ無いと思う。

まぁ0%とは思わないけど。


「社会人の恋愛モノだったわ」


「あ、そう」


「あ、そう」


お前ら殺すぞ。

何だよそのあっけらかんな感じは。

その様に考えつつ、握り拳を作って追い掛け回す。


「ってか、じゃあ彼女の元へ叩く行かないとな。飯島」


「そうそう」


「お前ら!何処までも!」


コイツら絶対に殴る。

俺はその様に思いながら、ケラケラ笑う奴らを追いながら校門まで走った。

全く.....酷くからかうけど良い奴らだ、本当に。



「ふぁ.....」


「でよー。あのアニメ、おもろくね?」


「そうそう!」


欠伸をしながら、アニメの事を聞く。

全くその通りだとは思うよ。

ちな、話の内容は生徒会長と女の子が恋愛バトルするヤツだ。


「.....」


俺は視線だけ動かして羽島を見た。

本を読んでいる。

俺はその羽島を見てから前を見ると。

高木と高島がジト目で居た。


「.....な、何だよ」


「何も進展がねーな」


「その通りですぞ。閣下」


盛大に溜息を吐いた。

当たり前だろお前らよ。

進展もクソもあったもんじゃ無い。

そもそも、羽島と俺は水と油の存在だしな。


「.....やー、面白味が有りませんな。閣下」


「そうですのぅ。大名」


「お前ら.....」


何もねぇって言ってんだろ。

俺はその様に言い聞かせながら居ると。

羽島がいきなり立ち上がった。

で、行く場所はトイレかと思ったのだが。


何故か高木の元へ行った。

驚愕する、高木。

俺達は?!と思った。


「.....高木」


「.....え、俺!?」


「来て」


一体何事。

そんな感じでクラスメイトが凍り付く。

何故か高木は引き摺られて行った。


「.....何だ?」


「知るかよ」


残された俺と高島は呆然と連れ去られて行った方角を見つめた。

そして、5分が経過した時。

高木が戻って来た。


「.....どうしたんだよ?オメー」


「.....お前さ.....。.....いや、やっぱ何でも無いわ」


「.....???」


高木は何かを言おうとしてそのまま黙り込む。

何だコイツ、キモい。

俺はその様に思いながら、同時に戻って来た羽島を見る。


羽島はいつも通りだ。

俺は?を浮かべながらも。

会話に戻った。



あっという間に時間は過ぎ去った。

その勢いはまるで砂時計の様な。


昼飯時になった。

俺は立ち上がって高島と高木の元へ行く。

しかし、何故か高島と高木は俺を一瞥して去って行った。


何やアイツら.....。

俺に散々イジメをやったくせにコソコソと2人だけで。


俺は???を浮かべて見つめる。

その際に、背後に人影を感じ、振り返ると、羽島が立っていた。

俺はかなり驚きながら、仰け反る。


「.....よ、よお。.....どうした?」


「.....これ」


「.....は?」


「.....受け取るの。受け取らないの」


その言葉を聞きながらよく見ると羽島は何かを持っている。

何か可愛らしいキャラモノの巾着に包まれた何か。

.....え?弁当?

手作りの、べ、弁当!!!!?


「.....は、羽島!!?.....の弁当.....!?.....俺に?」


「.....」


真顔の黒目で俺を見据え、頷く。

髪をクイッと上げる、羽島。


なん.....え!?

一気に教室が男子生徒の憎悪に満ち溢れた。

何が起こっている!?


「.....どうするの」


「い、いや。有り難いけど.....え?良いの?」


「.....早くして」


少し声音になった。

俺はタジタジしながらもキャラモノの巾着入りの弁当箱を受け取った。

まさかの事に俺は嬉しくて心でガッツポーズして。

ほっこりしていると、羽島が俺の手を握って.....え?


「.....うぇえ!!?」


「屋上」


天地がひっくり返りそうだ。

まさかの事に赤面で俺は居ると羽島がその様に話して。

そのまま屋上まで連れて行かれた。

多数の野次馬の目を感じながら、だ、ってマジに何事!?!!?

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