第2話 栞
俺の通っている県立学校一の美少女とされている羽島遊。
白鳥の様に麗しい彼女は高校二年生の俺、飯島三朗のクラスメイトで俺が好きな.....Eラインも完璧と言える様なとにかく可愛い顔立ちの本がとても好きな女の子だ。
俺はそんな彼女の事が好きだった。
まさに白鳥の如しと言われながら誰もがその彼女に告白で挑んだ。
しかしほぼ全員が散った。
何故なら彼女は喋らない、男に興味が全く無いから、だ。
それはまるで本当に本にしか恋をしていないとしか思えないぐらいに振り向かないと言っても過言じゃ無い。
その為、俺は彼女に告白はとてもじゃ無いが出来るとは思えなかった。
告白するのは簡単に言えば.....当たって砕けろ的な感じになる。
それは俺にとっては死に該当するから出来なかった。
彼女の心はまるで核シェルターだ。
刑務所の壁の様な。
だから振り向かせる言葉は全く思い付かない。
そんな俺は4月の帰宅途中の有る日。
彼女、羽島が偶然にも不良に襲われている姿を目撃して。
俺は格好悪い姿を見せながらも救出し。
そして殴られたせいで傷を負いながら学校へやって来た。
その際に羽島が無事である事をきちんと確認して心から安心し。
見ると、羽島は何時も通りだった。
その為、俺もいつも通りに振る舞う予定.....と思っていると、全く喋らない、男に興味の無い筈の羽島が俺に近付いて来て何かを呟き去って行き。
その日はクラスメイトがざわざわとざわついた日になった。
高木と高島は見合わせて驚愕して俺に問い詰められ。
時間は過ぎ去り、更に翌日になった。
全てが歯車の様に動き出した感じに感じれた。
だけど歯車は動いたが、クラスでは基礎学力テスト期間に突入していてあまり話題にはならず。
俺もテストで赤点を取らない様に努力していたので.....いつも通りで行こうと。
そう、思っていると集中していたせいで時間が過ぎて。
羽島の事を考えている暇も無くその日の昼間になっていた。
高木と高島と共に飯を食いに行こうと立ち上がる。
そして会話しながら何時も通りに売店へ向かおうとした。
その時、後ろで物音が。
教室のドアが開いた音だったが。
近付いて来た人物に俺は驚愕した。
それは女子生徒だったが.....意外な人物だったのだ。
「.....?」
「.....」
な、何だ?
俺はその様に思いながら驚く。
何故か、目の前に羽島が立っていた。
追い掛けて来た様な感じだ。
髪の毛を靡かせてそれを抑えながら俺をジッと見る。
高木も高島も廊下に居る奴ら全員が目をパチクリしている。
何事!?的な顔をしていた。
一切の鉄壁美少女が俺の前で止まっているからだろう。
ちょ、一体、何事だ!?
「えと、羽島.....どうした?」
「.....」
まるで人形の様で有る。
俺を一点で見据えてくる羽島。
そんなに見つめられてしかも黙り込むと流石の俺も恥ずいな.....と思って頬を掻く。
思っていると、羽島は手に持っていた本を手渡して来た。
そして俺はそれを羽島から受け取る。
「.....これ貸してあげる」
「へ?いや、俺は.....小説ってか本はあまり.....」
「.....」
そのまま俺から目を外し。
教室に戻って行く羽島。
何事だという感じで教室からも俺を見る野次馬が来ていた。
高木と高島は顔を見合わせてジト目で俺を見ている。
「.....お前、マジのマジに何やったんだよ?」
「何も.....」
「その傷か?何やった。白状しろ。自白しろ」
「だから何もねぇ」
高木と高島は俺の言葉に再度顔を見合わせて。
どうだか.....と溜息混じりに言う。
俺は苦笑しながら渡された物を見た。
しかしこの緑色の表紙の本.....一体、何だろう?
所謂.....硬いカバーの本。
つまり、ラノベとかでは無い.....なんて言ったら良いのか。
簡単に言えば、太宰治とかそういう難しい小説家の本カバーだ。
俺にとってはとても難しい本かも知れないが。
「.....」
少しだけ嬉しくなりながら踵を返して歩き出す。
羽島がくれたのだから。
折角だから読んでみるか.....。
と思いながら本を見ると紫色の栞が挟まっていた。
俺は?を浮かべながらも。
その時は高木と高島に呼ばれ、気に出来ずに。
そのまま本を持ったまま売店へ向かった。
☆
「でさ、ソシャゲのガチャがよー出ないんだわこれ」
「マジウケルな。ザマァだお前」
「ハッハッハ」
「殺すぞ!」
ったく今時、ソシャゲかよ。
金使い込むなよ?
高島、高木。
その様に苦笑しながら思いつつ、教室に売店から戻って来た。
本を教室の机に置きながら会話を続ける。
そして目の前を見ると真顔の.....羽島が立っていた。
俺は驚愕してひっくり返りそうになった。
教室中が俺達の方角を見ている。
何事だ、と
「.....な、なんだ!?」
「.....読んだ?」
「はえ?へ?」
「.....紫の栞」
紫の栞.....俺は、あ、と思い出しながら、紫の栞を見た。
簡単に言えば、紫陽花の押し花?だっけか。
それをひっくり返すと.....何か書かれていた。
(有難う)
「.....お前.....」
「.....それだけだから。あと、その本はあげる。必ず読んで」
そのまま羽島は席に戻って本を読み出す。
教室のクラスメイトが???を浮かべながら俺を見つめて来る。
だけど俺は.....その栞を見せなかった。
高木と高島も見てこようとしたが、隠した。
俺は.....本当に嬉しかったから。
秘密にしたかったから、だ。
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