本は好きですか、私は好きです。
アキノリ@pokkey11.1
第1話 恋
俺の名前は飯島三朗(いいじまさぶろう)。
平凡名に16歳、凡人の顔立ち。
簡単に言えば、イケメン+イケメンを二で割った様な青年顔だ。
そして黒髪の天パに身長174センチ。
今は俺はサッカー部に所属している。
役職はゴールキーパー。
友達も高木帆(たかぎはた)と高島実(たかしまみのる)という友人野郎2人に囲まれて居てそれなりに幸せな青春時代を過ごしていた。
そんな俺は女子生徒に恋をしている。
だけど、その恋は決して叶わないし、叶えられない。
何故ならその恋の相手は.....絶対に振り向かない鉄壁だから。
「うわ。また羽島に告白している奴が居るな」
とある日の夕暮れ時。
部活をしながら休憩でスポドレを飲んでいると。
目の前で同じ様に汗かいて飲み物を持った高島がその様な、可哀想に的な顔で話した。
振り向くと芝生の先に有る網の先、中庭あたりに少女が、男が居た。
俺はその少女に少しだけ赤面する。
と同時に慌てる目を向けた。
シュチュエーションとしては、本を椅子で読んでいた少女に突然、男子生徒。
俺よりも遥か上の高身長のイケメンが告白をしている様に見える。
だが、その少女は表情一つ変えてない様に見える。
その少女の名を羽島遊(はしまゆう)。
同級生の、俺のクラスメイト。
上位に居座る成績優秀者。
常に本を読んでいて、それだけで女子生徒から滅茶苦茶に嫌悪されている。
何故か。
それはボッチながらも顔立ちが余りに整っているから。
そして本が余りに花を添える様に似合って可憐だから。
学校一なんじゃなかろうか羽島の顔立ちは。
長い黒髪に、顔立ちは白鳥の如きEラインも整った、白い黒子一つ無い肌。
そしてスタイルもそれなりに抜群で、身長も163センチと高い。
だが、唯一の欠点。
それはさっきも言ったが.....男子生徒は誰1人として.....羽島を振り向かせていない。
というか、まるっきり男に興味が無い様に見えて仕方が無い。
見ていると、その男子はトボトボと帰って行った。
「あらら。やっぱ振ったか。羽島はやっぱ固いねぇ、守りが。成績はお前以上に固いんじゃねーの?ゴールキーパーさん?」
「うるせぇな.....」
高島は飲み物を横に振りながらケラケラと笑う。
その高島に怒りながら羽島を見た。
それで有りながらも俺は彼女に惚れている。
本を読みながらのその姿に.....俺は心を動かされたのだ。
だからいつか、いつかでいいから。
そうだな、時計の針の様にゆっくりでも良い、近付きたかった。
でも俺は心底から怖かった。
俺みたいなのが受け入れられる訳が無いと。
そう、思っていたから。
彼女は鉄壁。
簡単に言えば、結界の様な防御壁だ。
あのイケメンですら駄目なのに受け入れてもらえるとは。
到底、思わなかった。
「おーい!そろそろ練習すっぞ!」
思っていると、先輩がその様に話してきた。
俺と高島は、はい!と返事して。
飲み物を乱雑に芝生に置いて、俺は羽島を一瞥してから。
直ぐにサッカーの練習に参加した。
そしてその日は過ぎて行き、夜になる。
薄暗い感じの、だ。
☆
キコキコと音が鳴る。
風とかの音じゃ無くて、俺が自転車を転がす音だ。
母子家庭の家の子の俺は。
自転車も赤茶色に錆びた様な自転車だった。
いつ折れてもおかしく無いが、買う金は無い。
「.....」
夜道。
高木と高島と別れて家に帰る道、俺は家路に急ぐ。
家事をしなくてはいけない。
母さんは多分、働きに出ているから。
だから2人の妹達のご飯を作ってやらなければいけない。
小学生の妹達の学費、俺の学費。
母さんは必死にお金を貯めて、その学費やらシューズとか色々お金を出してくれた。
だからその恩返しをしなければいけない。
「.....?」
その夜道で人の声か何かが聞こえた。
声は何時も通り掛かるビルとビルの隙間辺りで聞こえてくる。
月光に間も無く照らされると思われる、街灯がその奥あたりでチカチカしている様な場所、その横には駐車場が有るが車は停まってない。
そこで.....不良らしき二人組が居た。
そんな不良どもの更に奥を見つめると。
男達の前に.....本を読んでいるままの羽島が居た。
その状況で本を読んでいるのか.....と思ったが、それ以前に何だと思った。
困惑しているとかでは無い。
しかし流石にウザいという目付きをしている様に見える羽島。
ちょっと待てよ.....何だあれは。
俺は瞬時に青ざめた。
まさかと思うが.....不良に襲われている?
俺は耳を立てて声を聞く。
「ねぇちゃん。誘ってんのによ。来いよコラ」
「その通りだ」
羽島は一言も発さない。
それにしびれを切らしたのか男が無理矢理、羽島の腕を握った。
羽島はビクッとしながら、本を落とす。
その光景に俺はザワッと.....何かが立った。
「止めろコラ」
気が付くと。
俺は自転車を打つけ、俺はその男達の視線を向けさせる。
鞄を俺は地面に叩き付けた。
男達は自転車を打つけられた痛み故か。
キレた感じで俺に向いてくる。
「.....って.....コラ何だテメェ!!!イテェ!」
「何だコラ!調子に乗んな!」
2人目の拳が頬に飛んで来て、殴られた。
後ろに下がる。
俺は血を拭ってから、その男達に飛びかかった。
そして殴る蹴るを打ちかます。
「さっきから.....このクソガキが!」
「ぶっ殺す!!!」
折畳式ナイフのようなヤツが1人目の自転車を打つけた野郎から飛び出した。
そして目を光らせて、折畳式ナイフをふりかざ.....やべ。
これは死んだ.....と思っていると。
サイレンが聞こえた。
ファンファン!
「.....チッ.....!」
「命拾いしたな!クソガキ!」
悔しげに俺の頬をもう一発、殴ってから走って立ち去る不良ども。
少しだけ霞む視界を頭を振って俺も立ち去ろうと動く。
目の前の羽島を一瞥して、良かったと思いながら。
その時だった。
「.....あの.....」
羽島の声を初めて聞いた。
本を拾って俺を見ながら少しだけ不安そうに、困惑している羽島。
俺はその様子を見てから血を袖で拭って。
そしてその場を後にしようと自転車を起こす。
格好悪い感じを見せてしまった。
これで本格的に男なのに情けないやらと思われただろう。
でも、後悔は無い。
何故かって?好きな人を救えたのだから、だ。
俺は少しだけ笑みを浮かべて。
自転車に跨って鞄を籠に打ち込んでその場を直ぐに後にした。
途中でパトカーとすれ違いながら行く。
俺はそれを見ながら、ちゃんと処理しろよ。
そう、思った。
☆
その事件の翌日の事。
4月の春の日を感じながら来て。
俺は傷を絆創膏などを貼ってイテテと言っていた。
「何だよそれ?どうした?」
「転けたってよ」
「ばっかでぇ」
「るせぇアホンダラ」
俺はジト目で高木と高島を見ながら、その様に吐き捨てる。
痛いな、マジに。
歯が折れて無かっただけマシか。
しかし、羽島を不良から救った。
こんなの夢みたいだと思うけどな。
痛みが有るから夢じゃ無いんだろうけど。
ガラガラ
朝の朝礼間際、8時10分。
何時もの様に教室のドアが開き、羽島が入って来た。
本を読みながら入って来た羽島はそのまま高木や高島や俺を通り抜けて後ろの方の自分の椅子に腰掛ける。
「.....」
良かった、傷も負ってない。
無事みたいだな。
俺はその様に思いながら、少しだけホッとして笑みを零して。
そして高木と高島を見る。
何故か2人は眉を顰めていた。
俺は?を浮かべながら、背後を見る。
そこに何故か羽島が立っていた。
顔は普通だが、流石美少女だ。
こんなに見つめられると結構迫力が、って、一体何だ!?
「.....貴方だよね。.....有難う」
「.....な、何が?」
「.....いや、知らないなら良い」
その様に呟き、そそくさと椅子に戻って行く羽島。
まさかの展開に教室中が凍り付いていた。
何故かと言われたら、あの羽島が。
喋ったのだから。
「.....お前、どんな魔法か魔術を使った?俺が告白しても一言も言わずだったのだが.....」
「使ってねぇよ.....」
俺は顔を引き攣らせて首を振る。
高木が指を俺に指しながら青ざめる。
高島は羽島の方角を見る。
「.....」
まさか.....あの羽島がお礼?
まさかな。
天地がひっくり返っても無い。
ハッハッハと思いながら。
先生が入って来たので、考えを中断した。
高島と高木が挨拶をして去って行くのを見ながら。
羽島の方を目だけ向けた。
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