第4話 外の世界へ
しばらくすると、レインは僕を、そっと離した。
雨はまだ、降っている・・・
「いい、涼」
「うん」
「引きこもってばかりいると、いつまでも、変わらないよ」
「えっ」
レインは、とても真剣だ。
「君たちは、私とちがい、晴れの日も、雨の日も、外に出れる。
私は雨の日か知らない。
でも、君は私よりも、外の世界を知ることが出来るはずだよ」
「外の世界?」
レインは、頷く。
「私は、太陽の光の温かさを知らない」
「レイン?」
「空の青さを知らない。月も星の輝きも知らない。
でも、君は全て知ってるんだよ」
「どうした・・・」
それ以上は出なかった・・・
「君たち人間だけじゃない。犬も猫も、そして蛙もヘビも・・・虫も・・・」
言葉が出なかった。
「私たちよりも、外の世界を知ってるんだよ」
レインがまるで、お姉さんのように感じた。
適切ではないが、他に思い浮かばない。
「君の事は、人間には見えないようにしておいた。
でも、動物たちからは、見えてたんだよ」
「どうして?」
「動物は、君を裏切らないから・・・」
言葉に意味は、レインの次の言葉でなっとくした。
「ナメクジは知ってるよね」
「もちろん」
「あれは、カタツムリが進化したものなんだよ」
「何が言いたいの?」
「つまり、家を捨てたの。外の世界に、絶えず触れるために・・・」
レインのは、あくまでも、例えだが、説得力があった。
すると、雨が小降りになってきた。
「あっ、私はそろそろ行かなくちゃ」
「どうして?」
「言ったでしょ?私は雨の中でないと、生きられない」
「レイン」
「じゃあね。後は君が見つけて」
「えっ?」
「君自身が感じて、外の世界を・・・じゃあね」
そういうと、レインは消えた。
雨はあがり、空には虹がふたつかかっていた。
福虹っていうんだな・・・
数年後・・・
僕は会社員となる。
営業の仕事をしている。
とても、大変で忙しい。
しかし、外の世界に振れる事が出来るので、苦は感じない。
そして、もうひとつ・・・
レインに会えるのを、楽しみにしているからだ。
あの日、レインが最後に僕に残した言葉・・・
「君自身で、外の世界を感じて・・・」
それが、引っかかっている。
試行錯誤しているが、もう少しで、掴めそうだ。
そんな、ある日、外回りの途中で、雨が降ってきた。
かなりの大降りだ。
「参ったな」
慌ててかけ出した・・・
すると、目の前に懐かしい顔が現れた。
髪をポニーテールにした、女の子だ。
「レイン?」
言葉を発することなく、静かに、そして、
優しく、抱き寄せられる。
懐かしく、そして、温かい・・・
「会いたかったよ・・・涼」
「・・・僕も・・・」
やがて、レインは口を開いた・・・
「涼、感じているんだね。外の世界を・・・」
「レイン・・・」
【今の君は、とても、輝いてるよ】
雨の精 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます