第3話 マイマイ
「着いたよ、涼」
「ここは・・・泉」
「うん、そうだよ」
何だろう・・・
記憶にない・・・
ないはずなんだが・・・とても、懐かしい。
「覚えてない?」
「うん・・・でも、懐かしい・・・」
「実はね、君はまだ、赤ちゃんの頃、ここで溺れたんだよ」
「ほんと?」
両親からは、何も聞いていない。
「たまたま、通りかかった女の子がいて、その子が飛び込んで、
助けてくれたんだよ」
「知らなかった・・・」
「うん、その子はお願したんだよ、君の両親に・・・」
「なんて」
「『私の事は言わないでほしい』と・・・」
「どうして・・・」
「知らない。でも、その日も、今日のような雨だったんだよ」
「雨・・・」
「おそらく、当時の君は、足を滑らせたんだね」
覚えていない。
いや、封印していたのか・・・?
「で、外の素晴らしさって・・・」
「あれを見て」
「あれは、マイマイ?」
「正式名称を知ってるなんて、通だね」
ちなみに、カタツムリの事だ・・・
「久しぶりに見たよ」
「カタツムリは凄いね」
「どうして?」
「家を持ち歩いているのに、引きこもることなく歩いている」
「何が言いたいの?」
「つまりね・・・」
レインは、僕を抱き寄せた。
「レイン」
「久しぶりだね。君を抱きしめるの・・・」
「えっ・・・」
「君が赤ちゃんの頃も、私がこうやって抱きしめたんだよ」
「・・・じゃあ・・・」
「何も言わないで・・・」
しばらく、そのままでいた。
レインはとても、温かい・・・
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