十一日目 あの実・この実(アノミ・コノミ)

なんだかとても長い間眠っていたような気がする。


時計を見ると12時半だった。


最近4時ごろに寝て、そこから8時間近く睡眠をとって、結果12時とか13時に起きる生活習慣を続けている。


これは、よくない。


具体的に何がよくないかは分からないが、みずみずしい夏の朝日を浴びることなく暗い部屋で眠りながら過ごしているのは、何だか勿体無い気がするし、生き物としての摂理に反している気がする。


スーパーで売られている赤いトマトを見るたびに後ろめたさを感じてしまうのは、そのせいじゃないかと思う。


彼らは(トマトの性詞は何、彼?彼女?)朝の光に起こされて、昼の焼け付くような光を目一杯浴びながら、夜は月の光に照らされて眠っている。


僕なんかより随分生命的だ。


そういった「自然の営みのなかで育まれた純情さ」の表れであるトマトを、百円ちょっとのお金で自分のものにして、何食わぬ顔でむしゃぶりつく。


生命として堕落した生活をしている僕の勝手で、そういったみずみずしい命が終わりを迎える。


ただ”霊長”というだけで、そういった特権が認められてしまっている、現状!


極めて何か生命に対する侮辱を感じざるを得ない。


だから、そういった後ろめたさゆえに僕は新鮮そうな野菜から逃げるようにして生鮮食品コーナーをあとにする。


そして、「自分と同じくらい不健康そうな」野菜の切れっ端みたいな部位を使ったであろう、『野菜1日これ一本』とか『1日分の野菜』みたいな、落ちこぼれの野菜たちの成れの果て、みたいなジュースを手にとって、家に帰るまでの道のりで歩きながら飲んでいるのだ。


あ、でもきゅうりは別な。


きゅうりは野菜っていうより、水みたいなもんやし、切ってちくわの穴の中に入れて、百円のビールと一緒に食べてる。


わさびとかマヨネーズとか付けて食べても、美味しいですよ。


中国語の論文の翻訳などをやりながら(卒論で必要なので)裏でDAZNをつけて中日戦の実況を聞く。


中継ぎが打たれていた。


結果序盤のリード虚しく7・8回で大差をつけられ阪神に逆転負け....


主戦力の離脱ゆえヘトヘトの投手陣と打線が、広大なナゴヤドームの緑のグラウンドに飲み込まれてしまいそうなほど小さく、頼りがいなく見えてしまう。


腹も空いたし家を出て近所のラーメン屋に行った。


地元の情報誌に付いてたクーポンを使ってまかない丼ってのをサービスしてもらう。


(客に出せるんだったら「まかない」じゃ無いだろ....それもう「売り物」だよ....)


毎月家のポストに投函されている無料の情報誌なのだが、ふた月に一回は市のおすすめラーメン屋特集をやっている。


こんなの実質『金○情報』改め『○沢ラーメン情報』だろ....


ラーメンはとても美味しかった、細麺だったし。


語ると長くなりそうなのでいつか話す。


家に帰ってベットでうなだれてたらいつのまにか寝ていた。


気づけば深夜3時だった。


シャワーを浴びて、目覚ましを9時にセットする。


起きれることを願って、就寝。

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あの水・この水(アノス・コノス) 山井前 @anosu-konosu

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