第21話 店主の告白(2)

店主の話は続いた。

店主「ベル…聴覚の神を手にした彼…名前は三太というらしいんだが、三太はその能力をつかって何をしたと思うかい?」

逢音「追手から逃げた?」

店主「もちろん、そのためにも使っただろうな。この他にも4つの能力があることをビビから聞いた三太は、その能力が宿った道具探しの旅に出かけたのさ」

逢音「…道具を集めてなにをなさるおつもりだったのかしら?」

店主「亡くなった恋人…名前は比美子というんだが、彼女を生き返らせることができると信じていたんだよ」

逢音「比美子、ひみこ…卑弥呼?邪馬台国の末裔?」

店主「それは今でも謎だ。とにかく三太は常人とは言い難い神の能力を持っていた比美子は甦るチカラを持っていると信じた。なぜなら崖から身を投じた彼女の遺体は見つかっていなかったからだ」

逢音「……」

店主「そこからわが一族の道具探しの旅が始まった。三太が亡くなってからは、もう恋人という感情を抜きにして、神を再生することが目標となった。最初こそやみくもに各国を飛び回っていたが、手っ取り早い方法があったのさ」

逢音「その時代に低い身分から急速に金と権力を握った者を探したんですね」

店主「おやおや、本当に君は聡明だ。そのとおりだよ。君が知っている有名どころでは、ナポレオン・ボナパルト、アドルフ・ヒトラーだな。イタリアのマフィアのボスもそう。

彼らは偶然手にした五感の能力で英雄となった」

逢音「そして非業の死を遂げた…」

店主「そう。彼らの没落の原因は能力の代償だよ。分不相応な欲望は、その対価を死として求める。これが必然だ」

逢音「比美子さんも代償を払っていたのかしら…」

店主「それは謎だ。少なくとも三太はそれはなかったと思っていたらしい。三太もビビから代償の話を聞いたときに疑問を感じていたそうだ」

逢音「全知全能の神…それは代償を伴わない能力を使えるってことなんですか?」

店主「それを証明するのは君だよ」

逢音「なぜですか?おじさんは少なくとも四つの神は手に入れてたはずでしょ?なぜほかの人にあげちゃうの?」

店主「私の望みは神じゃない。神のチカラを手に入れることなんだよ」

逢音「??」

店主「全能の神は人の体に宿る。比美子がそうであったように…。三太は比美子の復活を願っていたが、私はそれは不可能だと知っている。五感をすべて手に入れた者はね、人のカタチをした道具になるんだよ。その道具を操るのはこの…」

逢音「…いや…嫌です。私は瞳美の代償として五感の神すべてを葬らなければならない!」

店主「どうやって葬るつもりだい?」

逢音「そ、それは…」

店主「聞こえはいいが、それの意味するところは「君の死」なのかもしれないんだよ」

逢音「そ、そんな…」

店主「理屈の上での話だ。実際どうなるのかは私にもわからない。確かなことは、四つの神を手に入れた君が目の前にいる。そして五つ目は私が持っているということだ」

店主はゆっくりと立ち上がった。


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