第19話 正月

年が明け元日。

雑煮とおせちを食べて三社参りというのが篠崎家の慣習であったが、逢音は三社参りの同行は断った。

逢音「いろいろあったから…」

と両親には言外に瞳美の死を匂わせるようにしたが、本当はそうではなかった。

(私には4つも神様がいるもん)

両親が出かけて、逢音はすぐに4つの道具をだし五感の神を呼び出した。

「Hearing BiBi」

「Vision GaGa」

「Smell NeNe」

「Sense of touch TeTe」

ビビ「あけましておめでとう、逢音」

ガガ「Happy New Year !」

ネネ「ご主人さま、お年玉を…」

テテ「一富士二鷹三茄子」

逢音「のんきな神様だなあ。そんな気分じゃないのよ」

ビビ「逢音。昨夜四神で話したんだけどさあ…」

ビビは、アンティークショップの倉庫に最後の五感の神、味覚のミミがいることを伝えた。

逢音「間違いないの?テテ?」

テテ「たぶんねー。わたしたち五感の神はもともとひとつだったから、近くにいると存在を感じるんだよ」

逢音「そうとなったら…みんな出かけるわよ」

ネネ「三社参り?」

逢音「神様はあんたたちで十分。アンティークショップの偵察に行くのよ」

ビビ「正月だぜ。店開いてないよ」

逢音「中に入るとは言ってない。裏の倉庫を調べにいくのよ」

ガガ「不法侵入?」

逢音「場合によっては…ね」

逢音は4つの道具をカバンに詰め込んでアンティークショップへ向かった。

おそらく瞳美の代償の効果が逢音を動かしているのだろう。

アンティークショップは家から10分ほど歩いたところにある。

繁華街から反対方向になるので普段は人通りが少ないが、今日は正月とあって初売りやお参りに行く人を多く見かけた。

店は当然閉まっていると思い込んでた逢音はドアノブに掛かっている「OPEN」の札に驚いた。

馴染みの店ではあるが、正月に来たことはない。

(掛け間違いじゃ…)

ドアノブに手をかけゆっくりと回す。果たしてドアは開いた!

店主「あら、逢音ちゃん、あけましておめでとう」

たばこをふかしいつもの場所に店主はいた。

逢音「あ、あけましておめでとうございます…あ、あのここって正月もやってたんですね?!」

店主「いや今年は特別なんだよ」

店主はゆっくりと立ち上がり、ドアの表札を「CLOSED」に変えた。

店主「君がくるんじゃないかと思ってね」

カチリというドアの鍵が逃れられないステージの幕開けだということを逢音は感じとり、戦慄を覚えた。


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