第18話 四神会議

大晦日の夜。除夜の鐘が鳴り始めた。

逢音はこの一週間余りの出来事を振り返った。

(まだ、ビビと出会って一週間なんだ)

ジョージの言葉が心にひっかかっていた。

「使いようによってはビル・ゲイツ並みの大金持ちになれる」

「この能力を手にしたら…僕じゃなくても誰でも自分のために使いたくなる」

(私も瞳美と出会わなければそうなっていただろうか…)

大トロ20貫、小遣い3万円…私がビビを使って手に入れたもの…ほっとけばもっともっとエスカレートしていっただろう

(もし、瞳美の代償(五感の神すべてを集めてそれを葬ること)がなければ…私もジョージのようになっていたかもしれない)

能力を手にしたジョージの顔は、やさしい家庭教師のそれではなかった。

(あんな風にはなりたくない…瞳美に感謝すべきなのかな)

除夜の鐘が108つ目の煩悩を消し去ったと同時に逢音は深い眠りに落ちて行った。

ビビ「眠ったみたいだ。みんな起きろ」

ガガ「おう」

ネネ「あーい」

テテ「はいはい」

ビビ「ついに四神そろっちゃったぜ」

ネネ「あっけなかったね」

ガガ「あやうくテテはアメリカに行くところだったな」

テテ「そのほうがよかったのに…」

ビビ「おい!テテ!わたしたちの主人は逢音だ。逢音はこれまでで一番まっとうな主人だ」

テテ「わかってるよぉ」

ネネ「しかし、逢音は能力の使い方覚えてきたよね」

ガガ「ジョージへの切り替えしは見事だった」

テテ「アメリカ行けなくなった」

ビビ「こら!テテ!…お前に聞きたいことがある」

テテ「なんだ?」

ビビ「わたしはあのアンティークショップでネネと一緒にいた。だがお前はいなかったぞ。いつあの店に来たんだ」

テテ「クリスマスの日だったかな」

ビビ「前の主人は?」

テテ「死んだ」

ガガ「まあそうだろうな。ビビもネネもそうなんだろ?」

ネネ「そう」

ビビ「わたしもだ。でも重要なのはそういうことじゃない。数百年と世界中に散らばってた五感の神がこの短期間に集まったことなんだ」

テテ「ぐーぜん?」

ガガ「あほか、おまえ」

ネネ「誰が集めたの?」

ビビ「店の主人だろ」

ネネ「意図的に?それは無理だろ?」

ビビ「だからテテに聞いてるんだ。お前はどこから来た?」

テテ「裏の倉庫」

ビビ「なんだって!?」

テテ「前の主人が死んでここの先代の主人が引き取って…ずっと倉庫にしまわれてた」

ビビ「お前それいつくらいの話だ?」

テテ「かれこれ30年…」

ビビ「それを早く言え!」

ガガ「つまり、逢音がビビを手に入れてから、急に五感の道具の動きが早くなったんだ」

ビビ「そういうことだ」

ガガ「あやしいな」

ネネ「だれが?」

ガガ「店の主人だよ!」

テテ「店主は能力のこと知ってるのかな?」

ビビ「おそらく知ってるんだろう。知っててそれを人にばらまいているんだ」

ガガ「なんのために…知ってりゃ自分で使うだろうによ」

ビビ「そこだ…自分では使えない理由があるはずなんだ」

テテ「あの店の倉庫にはまだもうひとつ神がいるぜ」

ビビ・ガガ「なに?!」

ネネ「味覚の神しか残ってないよ」

ビビ「どういう道具だ。それ?」

テテ「姿カタチはわからない。お互いしまわれてたからな。でも感じたよ。味覚の神ミミの存在を」

ビビ「話したのか?」

テテ「うんにや。呼びかけても答えねー。」

ガガ「ますます怪しくなった」

ネネ「味覚の神ってどういう道具にとりつくの?」

ガガ「おそらくお前と一緒だ。食器類が怪しいな」

ビビ「おい。あそこの主人お客さんにコーヒー出すよな」

ネネ「出す出す」

ビビ「逢音…やばいかもな」

テテ「なんで?」

ビビ「あいつ食いしん坊なんだよ…」


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