第17話 ジョージ

ジョージに話したすべてのことは当然園子も聞いていた。

自然とあふれる涙をこらえきれない園子。

(逢音と瞳美は戦ってきたんだ…そして今逢音はひとりで戦おうとしている)

ジョージ「オーライ。なんとなくわかった。園子なんか命令してくれ」

園子「......」

ジョージ「どうした園子?」

園子「あ!今夜の初詣は中止にしよう」

ジョージ「わかった」

代償クリア!

逢音「どうするつもり?私はもう園子もあなたも巻き込みたくないの…」

ジョージ「……」

逢音「手袋私にくれない?」

園子「…ジョージ。わたしからもお願いする。逢音に手袋渡してあげて…」

ジョージ「全部聞いてしまったら、そういうわけにはいかなくなった」

逢音・園子「!!」

ジョージ「悪いけどこの手袋は、僕がもらう。君が目指している全知全能の神なんて興味ないし、僕にはこの能力だけで十分さ」

ジョージ「すごいな。これがあればこんなチンケなバイトしなくていいし…いやもう勉強も必要ない。使いようによってはビル・ゲイツ並みの大金持ちになれるってことだよな」

園子「ジョージ!あなたは….あなたって人は…」

ジョージ「園子、僕がそんなに善人に見えたのかい?それとも僕への好意がそうさせたのかな?言っとくけど僕は善良なアメリカ市民だったよ。犯罪にも手を染めず、まじめに生きてきた。でもこの能力を手にしたら…僕じゃなくても誰でも自分のために使いたくなる。卑怯者でも結構だよ。バイバイ。君の御守りもこれまでだ…」

ジョージはそう言い残し部屋を出ていこうとした。

園子「私の…私の気持ちを裏切ったあなたを許さない!このことは大学やあなたの関係者に全部暴露してやる!」

ジョージ「それは困るな」

ジョージは踵を返し手袋をつけて園子に向かっていった。

ひるむ園子。あっというまにジョージに羽交い締めにされた。

ジョージ「すべて忘れろ!」

この時を逢音は待っていた。

逢音「ジョージ!あなたもすべて忘れるのよ!」

代償クリア!

静寂の中に3人がいた。

うつろな目をした園子とジョージ。

ジョージ「あれ?園子さん。この方は確か、逢音さん?」

園子「なんでここにいるの逢音?」

逢音「なにいってるの。あなたがジョージにプレゼントする手袋、交換してって言ったから持ってきたのよ」

園子「そ、そうだっけ??」

逢音「ジョージ。こっちのほうがいいと思わない?」

ジョージ「あ、うん。園子、交換してもいいの?」

園子「ジョージがそっちがいいのなら…てか絶対そっちのほうが恰好いいよ!」

ジョージ「じゃあこれを逢音さんにあげればいいのね」

この瞬間、手袋の所有権がジョージから逢音に移った。

ジョージ「なんかいいものもらっちゃって悪いね」

園子「いつもお世話になっているから…」

いいムードになったところで逢音は退散することにした。

逢音「じゃあお二人さんよいお年を!」

園子宅のテレビではNHK紅白歌合戦が始まったところだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る