第16話 友情

園子の家は、逢音の家から徒歩で20分くらいのところにあった。

もう夕方の5時を過ぎている。大晦日の夜だから、長居はできない。

家の前まで来ると駐車しているバイクが目に入った。

(あれ?ひょっとしてジョージが来てるの?やばいっ!もう手袋渡しちゃってくかも…)

逢音「こんにちわー、お邪魔しまーす」

園子「おう。私の部屋においでよ」

二階から声がする。幼馴染の家は気楽でよい。

部屋に入るとそこには園子しかいなかった。

逢音「下でバイク止まってたけど彼氏来てんの?」

園子「え、いや。あの…バイクだけ置かせてくれって言われて…つーか彼氏じゃねーし」

珍しく顔を赤らめる園子。

逢音「じゃあまだプレゼント渡してないんだ?」

園子「うん。今夜一緒に初詣にいくんだよ。彼…いや先生が日本正月初めてだから…」

逢音「いいねえ~いいねえ~。そこで告白ってか?」

園子「いい加減にしないとマジで怒るぞ!プレゼント渡すだけだよ」

逢音「そのプレゼントのことなんだけど…」

ごぞごぞと自分の持ってきたブランド手袋を取り出す逢音。

逢音「こっちの手袋にしない?」

園子「え?」

逢音「イギリスに行ったときにお父さんが買ったんだよ。でも事情を話したら、園子にあげていいって..」

園子「ただでくれるのか?」

逢音「いやあー、それも気が引けるんでさっき園子が買った手袋と交換ってのはどうよ?」

園子「………」

逢音「これさー、イタリアの有名なブランドで…」

園子「そんなにこの手袋が欲しいの?」

逢音「え?」

園子「この手袋の能力が欲しいのかって聞いてる」

(まさか、園子は能力を知っている…あ、神と話したのか!しまった)

沈黙する2人

園子「この手袋の能力のことはテテという神から聞いた。そして逢音が3つの能力を持っていることも聞いた。ねぇ正直に話してくれないか。お前はこの五感の能力で何をしようとしているのか…ロンドンで何があったのか…」

逢音「……」

園子「黙ってないで答えろ!私にも能力使ったのか?部長の…瞳美の死も関係してるのか?」

逢音「もうこれ以上人を巻き込みたくないんだよ」

園子「私はもう巻き込まれてるんだよ。手袋の所有者になったから…逢音は…逢音は一体何をしようとしてるの?」

逢音「知らなくていいこともある。知ってしまったら園子を失う。私はそれが怖いんだよ」

園子「友達だと思ってた….親友だと思ってた…だからわたしは…」

逢音「私だってそう。だから園子には能力つかってない。それだけは信じて欲しい」

園子「じゃあ、瞳美はどう?なぜ彼女は死んだの?」

逢音「……」

園子「わかったよ。よほどの事情があるんだな。でもな、この手袋は渡さない。」

逢音「園子が持ってちゃダメなんだよ」

園子「ああ、お前が命じたからな。使うなって」

逢音「だからそれは園子を巻き込みたくなくて…」

園子「もういい…ジョージ先生出てきてください」

するとクローゼットの中からジョージが現れた。

ジョージ「全部聞いてたよ」

逢音「あ、ああ…能力のことも全部話しちゃったの?」

園子「逢音を信じようと思った。だけど怖かった。だから私には保険が必要だった」

ジョージ「僕がその保険ってわけだ」

逢音「まさか、園子…だめ、だめだよ」

園子は手袋をジョージに渡し、言い放った。

園子「この手袋をジョージにあげる!私は所有権を放棄する!」

逢音「…!!!」

ゆっくりと手袋をはめるジョージ。

そのジョージの手が逢音に伸びてくる。

逢音「いや!来ないで触らないで!」

あっというまに逢音はジョージに腕をつかまれた。

ジョージ「全部話すんだ」

遠のく意識の中で逢音はベルとメガネと香水を忘れてきたことを悔やんでいた。

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