第15話 誤解

テテが話したことは園子に衝撃を与えた。

この手袋の持つ触感の能力は無論のこと、聴覚・視覚・嗅覚の能力をすでに逢音が持っていることが園子にとって何よりの驚きであった。

園子「逢音は、私や友達にその能力を使ったのかしら?」

テテ「そこまではわからない。だが彼女が私の能力を欲しがっているのは間違いない」

園子「…部長も…曽宮部長もその能力の犠牲になったの?」

テテ「わからない」

園子「この手袋を使って聞き出せるかしら…」

テテ「それがな、ちょっとややこしいことになっていて…」

テテは、園子が無意識に使った触感の能力の代償が「手袋を使わない」ということになっていることを伝えた。

園子「逢音がそうさせたの?私の能力を封じるために…」

テテ「そう。そしておそらく奪うために…つまり園子は、所有者でありながらその能力を使えないんだよ。やれやれ情けない主人を持ったものだ」

園子「どうすればいいのかしら…私」

テテ「信頼できる人間に渡してしまうしかないな」

園子「私の親友は逢音よ。彼女以外には考えられない」

テテ「でも、その彼女は君に本当のことを伝えていないんだぜ。そんな人間を信頼できるのかい?」

園子「………」

テテ「そもそも君は、この手袋を誰かにあげるつもりだったんじゃないか?」

園子「先生…そうジョージなら信頼できるかも…」

テテ「あげちまえばいい。君が持ってても仕方のないものだ」

園子「待って…もう一度、もう一度だけ逢音を信頼してみる。本当に彼女がこの能力を奪おうと思っているのかを…そしてなんの為に五感の能力を集めようとしてるのかも….」

その頃逢音は、ショッピングモールでやっと良さげな手袋を見つけた。

アンティークの手袋より、上質でおしゃれ。イタリアの有名ブランドで店員の説明によるとバイクの運転にも使えるとのことだ。値段は3万5千円。

5千円は自分の本当の小遣いから出さなければならなかったが、今はそんなことを言っている場合ではない。

園子が果たして交換に応じてくれるのかどうか自信はなかった。

そもそもそうまでする理由がない。

(お父さんがイギリスで買ったことにしようかな…そんでこっちのほうが良くない?って感じで…うんうん。それなら納得してくれそうだ…両方を比べれば、間違いなくこっちのほうを選ぶに決まっている。殴ってしまったお詫びという言い訳にすればよい)

逢音はちょっとだけ楽観的になった。

(あ、ジョージに渡してしまう前に交換してもらわなきゃ)

逢音はスマホで園子に連絡をとった。

逢音「園子、鼻血大丈夫?」

園子「心配してくれてたのか…大丈夫だよ」

逢音「そう…よかった。それじゃあさ、ちょっと今から園子の家に行っていいかな?」

園子「……..」

逢音「ん。まずいの?」

園子「いや、いいよ。私も話したいことがあったんだ」

逢音「らじゃー!今から向かいますです!」

スマホを切った園子はとまどっていた。

(やはり逢音は手袋を手に入れたいんだ…)

逢音は買ったばかりの高級ブランド手袋を抱えて園子の家に向かっていた。

ベルも、メガネも、香水も持たずに….

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