第8話 告白(その1)

瞳美はこれまでの経緯を英語で語った。

自分が視覚の能力を祖父から受け継いだこと。

すべての五感の能力を集めようとしていること。

聴覚の能力を持つ逢音と出会い協力者となったこと。

そして、今ここに至るまで…

逢音は、その様子を冷静に見ていた。

(瞳美はこの老婦人にしゃべらされている。この老人が能力者?さっきの香り…

そうか…嗅覚の能力者、そしてあの香水のビンが…)

エミリーは時折、悲しそうな表情を浮かべて瞳美の話を聞いていた。

聞き終わって、ダンに声をかけた。

エミリー「儀式を」

その瞬間を逢音が逃さなかった。

逢音「香水のビンを渡しなさい!」

代償クリア!

香水のビンを逢音に渡したエミリーは我に返った。

エミリー「あ…」

逢音「さあ、ビビの出番よ!」

チリーン!

逢音「あなたのことを全て話しなさい。(英語)」

逢音の英語能力の全てを使った瞬間でもあった。

エミリーはゆっくりと話はじめた。

話の概要はこうだ。

エミリーとロバート(瞳美の祖父)は将来を誓った恋人同士だった。

エミリーは英国貴族。一方、ロバートはその領内で働く農夫の一人。当時では結ばれようのない身分の差があった。

やがてエミリーは同じ身分の貴族と結婚。婿養子として迎え入れた。すぐに子供にも恵まれた。

未練を断ち切るため、ロバートは港の市場で知り合った日本国籍の娘と結婚をした。

お互いはここから違う道を歩むはずだった。

だが、ロバートが怪しげな日本の古物商から黒メガネを手に入れた時、彼の魂に悪魔が宿った。

ロバートは視覚の神をあやつり、次々とエミリー家の財産を奪っていった。

エミリー家は没落していった。婿養子はエミリーを捨て、家を去った。

ロバートはエミリーから貴族の身分をはく奪するのに黒メガネを何度も使った。そしてその代償は日本人の妻との間に生まれた子供に求めた。

結果、ロバートは家庭を大事にした。それが自分の息子の要望だったのだ。

エミリーから奪った財産で事業を起こしたロバートは成功した。

そしてエミリーを自分の家の使用人にした。それもメガネの力だった。

そうして時は経ち、自分の一人息子が事業を継ぎ、日本人女性と結婚をした。

間もなく生まれたのが瞳美であった。

(もう能力は必要ない。自分はすべてを手に入れた。いや、まだ手に入れていないものがある。エミリーの心。これだけはメガネのチカラを借りるわけにはいかない)

そう思い、ロバートはメガネの所有権を瞳に委ねた。


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