第7話 イギリス(その2)
逢音「ひぃぃぃー寒うぅい」
ロンドンのヒースロー空港に降り立った逢音はブルブル震えていた。
瞳美「同じ北半球でも、特にこの時期のロンドンは日本に比べて寒いんだよ。あ、おじさん、ここからだとタクシー使ったほうが便利だよ」
父「あ、そうかい。お任せするよ。なんとかクリスマスまでに香水のビンを….」
(まーだ魔法が解けないのか…手に入れた瞬間正気に戻ったら、親父殿はびっくりするだろうな)
逢音は父に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
あれから、逢音と瞳美はお互いの両親に能力を使ってイギリス行を承諾させた。学校に連絡してもらうことも含めて…(とはいえ学校は当日終業式であるから、もう冬休みに入ったようなものだ)
あと園子に初めて能力を使ってしまった。しばらく自分と部長が部活に出れないことを部員たちに伝えて欲しいということを…
(吹部には迷惑かけたくないな…それは瞳美も同じはずだけど…いやこうなっては瞳美にとって部活なんてどうでもいいのかもしれない)
瞳美「逢音!タクシー捕まったよ!早く早く!」
瞳美によると目指す住所はここからタクシーで50分ほどのところらしい。
瞳美「ダリジ・ビレッジ二番街まで…あ、途中ビッグベン観れる道通ってください(英語)」
流ちょうな英語でドライバーに行先を告げる瞳美。
逢音「ビッグベンってあの有名な時計台?」
瞳美「ここまできて持って帰るのが香水のビンだけじゃもったいないでしょ」
瞳美はウインクをよこした。
車はロンドンの中心街を抜けて東へ…逢音が観たビッグベンにはピーターパンはいなかった。
瞳美「着いたよ」
タクシーを降りた3人は大きな庭のある広大な屋敷の前に佇んでいた。
逢音「ここが瞳美のおじいさんのお家」
瞳美「私が住んでいた頃より庭の手入れが行き届いてるな。いい人に借りてもらったみたいだ」
逢音「これからどうするの?」
瞳美「まずは私が挨拶する。ここの家のオーナーだって言う。そしてお父さんに香水のビンを譲ってもらえるよう交渉してもらう。だめな時は私が能力を使う。代償フォロー頼んだよ」
逢音「わかった」
玄関のブザーを鳴らすと、初老の男が出てきた。
男「なんの御用でしょうか(英語)」
瞳美「私はここの家のオーナーです。日本から来ました(英語)」
男「それはそれは遠いところから…私はこの屋敷の使用人です。主人を呼んできますのでしばらくお待ちください(英語)」
現れたのは80代くらいと思しき老婦人だった。
エミリー「これはこれはかわいい大家さん。はじめまして。私がこの家をお借りしているエミリー・アンジェリーナです。電話いただければお迎えをよこしたのに(英語)」
瞳美「早速ですが、エミリーさんは、先日日本のアンティークショップで香水のビンを買われましたか?(英語)」
エミリー「買いました。でも日本に足を運んでくれたのは使用人のダンです(英語)」
瞳美「見せてもらえませんか。私の友人がとても欲しがっていたものなんです(英語)」
エミリー「そのためにわざわざ…ダン、例の香水のビンを持ってきて(英語)」
使用人ダンは二階から木箱を持ってきた。
中には薄紫色に輝く見事な造形の香水のビンがあった。
エミリー「これで間違いない?(英語)」
覗き込む瞳美と逢音
瞳美「逢音、これなの?」
逢音「うん、間違いない。これ」
瞳美「おじさん、これを譲ってくれとエミリーさんにお願いしてください」
父「これを私に譲ってくれませんか、お金はいくらでも構いません(日本語)」
瞳美が通訳してエミリーに伝える。
エミリー「あなたがたがこの香水のビンにこだわる理由が知りたいわ(英語)」
瞳美「それは、ずっとこの子(逢音)が欲しくて欲しくて…(英語)」
エミリー「だから、父親に能力を使って買わせようとしたの?(英語)」
瞳美「!!!!」
(やはり能力使い!この女が…この女がおじいさんを!!!)
あわてて鞄から黒メガネを取り出す瞳美。
なにが起こったのかわからず、あわてる逢音。
その時、部屋になんともいえない芳香が立ち上った。
一瞬動きがとまる逢音、瞳美、父。
「すべてを話して…お願い」
エミリーは香水のビンの蓋をそっと閉めながら瞳美に向かってやさしく言った。
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