第5話 クリスマスプレゼント

逢音はいつも通りに起床した。

体が少し痛い。そうだ、昨日の大トロの代償がキッチンの換気扇掃除だったのだ。

(年末の大掃除の一番いやな役目をやらされた…まあこんなもんで済んでるうちは…あ、今日はクリスマスイブ!)

逢音「プレゼント貰おう。へっへっへぇ…」

欲しいものは決めてある。例のアンティークショップにある香水のビンだ。

薄紫色に光るしゃれた香水のビン…ずっとながめていたいくらい美しい。

自分の小遣いじゃとても手が出ない。かといって、店主にベルを使って頂いちゃうのは良心が痛む。

リビングに降りていく途中でトイレから出てくる父親と出くわした。

チリーン

逢音「クリスマスプレゼントにアンティークショップにある薄紫の香水のビンを買ってください」

父「わかった」

逢音「ねーねーお父さん。肩もんであげようか?」

父「あ、いいよ。それよりトイレ汚しちゃったから綺麗にしといて。ママが怒るからさ」

逢音「はーい」

代償クリア!

(こ、このくそ親父め!)

場面はかわって学校。もうすぐ終業式ということもあり授業は午前中まで…午後は全校生徒で学校の大掃除という予定である。

逢音「昨日の晩からずっと掃除だよぉぉぉー」

園子「ははは、昨日のツキの倍返しだな。しっかり働け」

逢音「冬休みも部活あるんだよね?」

園子「コンクール間近だし、休めるのは大晦日と正月三が日くらいだよ。でもマネージャーもずっと出ろって言われたの?」

逢音「ん…ああ、そのことで放課後部長と話すんだけどさ…」

園子「ずいぶんと頼りにされてるな。部長に憧れてるあまたの下級生が泣くぞ。あ、逢音さあ英語苦手じゃん?部長の英語の成績は全国でもトップクラスだよ。教えてもらいな」

逢音「へえー、そんなにすごいの?」

園子「部長はさ、中学までイギリスにいたんだって。いわゆる帰国子女なんだよ」

逢音「へー、初めて聞いた」

園子「なんでもおじいさんがイギリス人だって…だから部長はクォーター」

逢音「くぉーたーって?」

園子「おまえ、まじ英語やばいな。1/4外国の血が流れてるってことだよ」

(そうか…亡くなった瞳美のおじいさんはイギリス人だったのか…)

全校大掃除が終わり逢音は約束通り、生徒会室に向かった。

そこには当然のことながら瞳美がいた。

瞳美「待ってたよ」

逢音「はい」

瞳美「昨日の件、私なりに考えたことを言うね」

瞳美が言ったことはこういうことだった。

1.二人がお互いに能力を使うことはしない。会うときは道具(ベルと黒メガネ)を出しあって、すぐには手の届かないところにおく。

2.安全に代償を払いたいときには、お互い協力する。

3.今後二人は五感の神の道具を全部集めることに協力する。

瞳美「とにかく能力使うのに困ったときは、私が相談に乗るよ。私には3年間の経験がある。だから五感集めには協力してちょうだい。それと….」

逢音「代償の協力…ですね」

瞳美「そう…これはもう信頼するしかない。私を信じてもらうしかないし、私は逢音を信じる。ま、そういう場面があればの話だけど…」

逢音「わかった。でも五感集めって…どこから始めるの?世界中にちらばっているのなら一生かかっても無理なんじゃ…」

瞳美「私もそう思っていた。でも逢音のおかげて手がかりがつかめた。あなたがベルを手に入れたアンティークショップがあるでしょ。あそこにあたってみようと思うんだ。あのベルがどうしてあそこにあったのか…」

逢音「あ、ああそうだよね。店主さんに聞けばわかると思う」

瞳美「うん。それが二人で初めてやる仲間としての共同作業だ」

逢音「わかった。今から行く?」

瞳美「今日はクリスマスイブでしょ。予定いっぱい入っちゃってるし、部活も追い込みの時期だし…また連絡するわ」

逢音「おっけー」

(瞳美なら大丈夫。信頼できる仲間になれる)

家路を急ぐ逢音。逢音は瞳美との距離が急に縮まったような気がしていた。

逢音「ただいまー。クリスマスケーキ買ってる?あとケンタもー」

母「それどころじゃないのよ」

逢音「どうしたの?」

母「お父さんが急にイギリスに行くことになって…」

逢音「ええええー、なんで急に!」

母「よくわからないんだけど、上司の指示かなにかで、イギリスの骨董品を買い付けにいくんだって。明日の朝一番の飛行機だからもう準備が大変…」

父の部屋に急ぐ逢音。

いやな予感がした。

逢音「お父さん、イギリスで骨董品買うって、まさか…」

父「あ、逢音。頼まれた香水のビンなんだけどな、先日イギリス人に売られちゃったみたいなんだ。その人から譲ってもらうしかなくてな。ははは、高いクリスマスプレゼントになりそうだ」

絶句する逢音

(ビビに、いや、瞳美に相談しなければ…)

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