第28話 魔法使いの姉弟子VS村人 前編

一切見えなかった力に突き飛ばされ


今までとは異色の相手を敵に回したことを悟った。




こうなると敵の魔法の正体を掴むのに時間が掛かる。


そうなればアイリスとの合流も遅れ、


すぐ近くで混乱を起こしている奴らも


いつ沈静化してこっちに向かってくるか分からない。




周りを敵に囲まれれば、


自分は良くともアメルを守って抜け出すのは困難だ



「どうしたんだい?


 アタシをあっさり倒してやる、みたいなこと言ってなかったかい?」



仲間の手前、調子の良いことを言ったのと


本心から大した相手ではないと高を括っていたが、


どうやら時間を要することを覚悟した方が良さそうだ。




「ああ、さっさとお前を退けてこんなとこ出て行ってやる!」




がむしゃらに突っ込んででも、


まずはどのような出方をするか見ないことには対処も出来ない。




自分の身体の丈夫さを信じて突進する



「ダメ! 力技でどうこうなる相手じゃ――」




アメルの声が暴風が吹き荒れるような音に遮られた。


俺のタックルの足が止まる




「ぐッ、くっ......!」



それでも歯を食いしばってグイグイ進む。


何の力に押し戻さようとしているのも分からずに


力任せに一歩一歩、床に足をめり込ませて向かう



「ほう......こいつは驚いた」



徐々に自分の身体も馬力が出てきて


速度を上げて勢いそのままに、


女のもう一歩手前というところで


俺は急に浮き上がるような感覚を受けた。



「アンタ、バケモノみたいなパワーだけど


 一体どこでそんな身体強化を習ったんだい?」



相変わらず余裕が表れて聞こえる声が聞こえたのは自身の足元だった。


つまり浮き上がる感覚だけに過ぎず、


身体そのものが浮上させられていた



「まあ、真っ向にぶつかり合うつもりはないよ。


 残念だったね」



段々聞こえる声が遠くなり、


天井が近くに感じるまで宙に浮かされていく。



空中でバタバタと手足を振ってみるが視界が変わるだけで


終いには、天井の固い感触が背中に引っ付いたまま


アメル達が小さく見えるまで宙吊りにされた



「どうだい? そっからの景色は?」



愉快そうに笑う魔女とは対照的に


小さい魔法使いはこちらを心底不安そうに見上げる。



そしてアメルは俺から目線を逸らした



この後のことが分かるからだろう。



無論、俺も奴の魔法の正体も


ここから先の攻撃まで分かるからこそ


危機感が迫って来ている。



それでもどうしようもない


身体の自由が効かないことはとうに分かっている。




ならば


ただ受けきるのみだ、奴の猛攻を



「それじゃあ......覚悟しな!」



女が思い切り腕を下に振ると、


それと同時に自由落下では有り得ないほどのスピードで体が下方に引っ張られる。



床が近付いてくるのは一瞬で


俺は受け身も何も無く、




顔の鼻っ柱から地面に叩きつけられた


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