第14話 昼休み

「暇だなぁ~」



そう言いつつそこら中を殴り続けていると

一種のアートのようになり始めていたが、


それほどまでの時間殴っているつもりでも日差しの明るさは変わらない。



そろそろ夕方くらいかと思っていたというのに時計も無い物だから


途方に暮れるしかない。



反対に時計があったら時の経過がゆっくりと流れていることが分かって、


それはそれで気が滅入るかもしれない



そんな風に囚人の辛さが分かり始めてきたような時に


急に一室だけでなく


この建造物全てに響くような声が聞こえ始めた。



また拡張魔法なり便利なものでもあるのだろう、と


人も物も転移できるほどに魔法が発展しているとは知らなかった田舎者も


もう大体の予想が付く。



「楽しい昼休みの時間です。


 皆さん、狭い所から解放されて元気に身体を動かしましょう」



陰気で罪人と容疑者がいるような場所には似つかわしくないアナウンスが入ると


部屋の鉄格子の扉が自動で開いた。


それも他の所も一斉に開いたような音がした気がする



そして数秒後には

囚人服を着た者たちが大勢でドタバタと目の前を走り過ぎていくではないか



それも全員やけに楽しそうだ。


他に娯楽がないためか、待ってましたとばかりだ



自分もこうはなりたくないな、と非現実的に目の前の光景をボッーと見ていると


その内の一人がズカズカと

俺の部屋に入ってきて現実に引き戻されることになった。



「おいおい、アンタ新入りかい?


 早いとこ行かないと自由の時間が過ぎちまうぜ」


「え? ああ! ちょっと!」



腕をグイっと引かれて


その入ってきた猫背の頬が痩せこけた男に連れられていくと、


群衆の波と共に広い中庭のような場所に出た。



太陽の光が降り注ぎ、


土煙をあげて囚人たちは喜んでいる。


あるものはどこかからボールを持ち出して複数人で遊び始めたりなど、


懐かしい楽し気な光景が広がっていた。



「ここは俺達の唯一の遊び場さ、


 今の内に身体動かさねぇとストレスが溜まっちまうぜ?


 イヤッホー!」



そう残してその男は言ってしまった。


大人が公園のような場所ではしゃいでいるのは何とも平和的だが、


ほぼ全員が罪人とあっては不気味な眺めだ。



そもそも俺も詳しくはないが刑務所と留置所は違うのではないのだろうか......?


ごっちゃにされているとしたら大変だ。



もしこの中でただの容疑者として連れて来られた者が目立とうものなら、


腹いせに集団リンチが行われてしまうかもしれない



なんて考えている矢先に



「今日は新しいプリズンメイトのご紹介です。


 入口に茫然と立っています、肌色の悪いウィン君で~す。


 仲良くしてあげて下さい」



呑気な声で紹介がなされて、



一斉に視線はこっちに向いてしまった



アナウンスの声は明るめに聞こえるが


よく考えたら俺を連れて来た男の声だと分かって


何か陰謀めいたものを感じ始めた。


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